広島が圧倒的な強さで優勝も
待ちに待った瞬間が訪れた。1991年以来の歓喜が広島の地に戻ってきた。黒田博樹、新井貴浩らのベテランや若手の鈴木誠也、さらに菊池涼介、丸佳浩といった中堅選手らが年間を通じて活躍。広島東洋カープが25年ぶりにセ・リーグ優勝を果たした。
しかし赤ヘル軍団が、すんなりと日本シリーズに出場できるわけではない。広島は、リーグ2位と3位が戦うクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージの勝者と最大6試合(4戦先勝)のCSファイナルを戦い、勝ち抜く必要がある。全試合をホームで戦い、さらに1勝のアドバンテージを得るが、短期決戦では一つのプレーが流れを変え、勝敗の行方を大きく左右することもあり、圧倒的な戦力を誇る広島といえども油断はできない。
元はといえば、今季のセ・リーグのように1チームが独走した場合、優勝が決まった後のいわゆる消化試合を減らすことがCS制度導入の主目的だった。現在3位のDeNAは借金5ながら3位で、CS進出の可能性が高いが、4位ヤクルトとの差は3.5ゲーム。3位争いから目が離せないのは事実だ。
しかし仮に借金を背負った3位チームがCSを勝ち抜き、日本シリーズに進出した場合、どのチームのファンも複雑な心境になるのではないだろうか。広島ファンはもちろん、勝ち抜いたチームのファンも心の底から喜べるだろうか。
ルール上は今季のセ・リーグ覇者は広島であることに変わりはない。CSはあくまでも日本シリーズ出場権を懸けた争いだ。2位と3位のチームは、ルールにのっとったうえで日本シリーズ出場の権利を懸けて戦う。もし勝ち抜いた場合は称賛されるべきだろう。しかし、もしそうなった場合、やはり何かしっくりこないと思うファンは多いはずだ。
一方、パ・リーグは日本ハムとソフトバンクが熾烈な優勝争いを繰り広げている。パ・リーグがこのまま僅差で優勝が決まったとすれば、どちらのチームがCSを勝ち抜いてもほとんどのファンは納得するのではないだろうか。逆にパ・リーグも現在2位から10ゲーム離れた3位チームがCSを勝ち抜けば複雑な心境を抱くだろう。
CS制度の見直しも必要?
現行のCS制度が始まってちょうど10年。よくファンの間でも議題になるのは「ゲーム差」によってアドバンテージを変える方法だろう。優勝チームから10ゲーム以上離されたチームにはCS出場権を与えないというやり方も一つの案だ。
他にも、たとえばCS出場枠を上位3チーム、かつ優勝チームから5ゲーム差以内と決めてしまう方法もありだろう。1位チームと3位チームとの差が5ゲームを超える場合は1位と2位チームだけで行えばいい。
さらにゲーム差がちょうど「5」なら、2位チームが勝ち抜く条件を6連勝とするのはどうだろうか。ようは公式戦とCSを含めて勝率が1位のチームを作るということだ。今季の両リーグに照らすと、セ・リーグはCSを行わず、パ・リーグは仮に3ゲーム差で終わった場合、2位チームは4連勝する必要があるということになる。
興業的な側面からも試合数が不確定となる制度が難しいのは百も承知。しかし各リーグ6チームずつという“小規模”のプロ野球界にCS制度はそもそも必要なのか。理想論をいえば、すべてのチームがシーズン終盤まで優勝を争い、最終的にリーグの最高勝率チームが日本シリーズに出場する制度であるべきだ。
やはり12チームのうち6チームに日本一の可能性がある制度には違和感を覚えざるを得ない。まずは戦力均衡化を優先的に考え、ドラフト制度やFA制度の見直しを行っていくことも大事ではないだろうか。
文=八木遊(やぎ・ゆう)