80年目に味わった屈辱
中日の球団創設80周年は、忌まわしきメモリアルイヤーとなってしまった。
谷繁元信監督がシーズン途中で休養。森繁和監督代行になったものの、チーム状態が劇的に上向くこともなく...。実に19年ぶりの最下位という屈辱を味わった。
2013年から4年連続のBクラスと、かつて憎らしいほど強かった頃の面影はもうない。球団史上最も厳しい状況を迎えたと言っても過言ではないだろう。
今年もっとも経験を積んだ高卒ルーキー
そんな今季を振り返るうえで、数少ない明るい話題といえば...。高卒ルーキー小笠原慎之介のピッチングだろう。
ドラフト1位で入団した小笠原は、5月31日には一軍に昇格。ソフトバンク戦でプロ初登板・初先発を果たす。そこで5回1失点の好投を見せるも、白星はつかず。その後も先発にリリーフと登板を重ねたが、プロ初勝利はなかなか挙げられなかった。
気がつけば夏、8月20日のDeNA戦でも敗戦投手となり、これで開幕から5連敗。2リーグ制後、開幕から5連敗以上を喫した高卒ルーキーは1952年の吉田陽次(近鉄)の5連敗、1953年の西村貞朗(西鉄)と1961年の徳久利明(近鉄)の6連敗に次いで55年ぶり4人目。セ・リーグではワーストという記録である。
待望のプロ初勝利は、9月4日の巨人戦。7回3失点ながら10個の三振を奪い、ようやくウイニングボールを手にした。プロ1年目は最終的に15試合の登板で2勝6敗、防御率3.36で終えている。
今年12球団の高卒ルーキー投手は、育成契約を除くと15人いた。そのなかで一軍登板を果たしたのは、この小笠原と望月惇志(阪神)のふたりだけ。望月は最終盤に1試合のみの登板だったため、1年目に一軍で最も投げた高卒ルーキー投手は小笠原ということになる。
ちなみに、大学・社会人出身のルーキーを含めても、小笠原の72回1/3という投球イニング数は5番目の多さ。同期のなかでは、最も経験を積むことができた1年目だったといえる。
浮き彫りになった課題
ここからは小笠原が残した数字から、来季へ向けた“課題”を探っていこう。
まずは球場別成績を見ると、本拠地ナゴヤドームでは0勝4敗、防御率3.34。一方、ビジターの試合では2勝2敗、防御率3.38。本拠地で勝てていないが、防御率には大きな差がないことがわかる。
また、打者の左右別成績も、対右が被打率.215なのに対し、左打者には被打率.228。こちらも大きな差はない。
このように状況別で目立つ課題はないが、失点の傾向を見ていくと克服すべき点が出てくる。
小笠原のイニング別失点は、「初回」と「5回」の7失点が最多。次いで「4回」の6失点。先発した12試合のうち、実に4試合で初回に失点。さらに3試合で「2回」と「4~6回」に失点し、2試合で「3回」に失点している。これらの数字を見る限り、“立ち上がり”は課題のひとつと言えそうだ。
加えて、小笠原が投げているときに味方が得点したイニングは14。そのうち6回で、味方が得点した直後に失点している。味方が得点した直後に、約半分の割合で失点しているのはいただけない。
さらにもうひとつ。小笠原が1イニングあたりに要する平均球数は17.46球。一般的に14~15球で収めるのが理想と言われており、1イニングで2球以上は少なくしたいところだ。
ただし、小笠原は高卒ルーキー。課題があるのは当然だ。むしろ1年目から一軍の場で経験を積み、課題を見つけられたことが大きな財産となるだろう。
先日、小笠原は左肘のクリーニング手術を受けた。年明けにはキャッチボールを再開できるようだが、開幕には間に合わないと見られている。
しかし、男のキャリアはまだ始まったばかり。焦らずに調整して、今季得た経験を生かしてほしい。
文=京都純典(みやこ・すみのり)