コラム 2016.11.19. 09:00

広島・ジョンソンは7項目中4項目で受賞 沢村賞の新選考基準を考える

かなりハードルが高い現時点での沢村賞選考基準


 今年度の沢村賞に、広島のクリス・ジョンソンが選ばれた。外国人投手の受賞は1964年のジーン・バッキー(阪神)以来、52年ぶり2人目。個人タイトル獲得なしでの選出は、1981年の西本聖(巨人)以来となる。

 シーズンで最も優れた先発完投型の投手に贈られる「沢村賞」は、1950年の2リーグ制以降しばらくはセ・リーグの投手のみが選考対象だったが、1989年からは12球団全投手が対象となっている。1981年までは記者投票だったが、1982年から選考基準が設けられ、元プロ野球投手による沢村賞選考委員会が選出する形となり現在に至る。今年度の委員は、堀内恒夫、平松政次、村田兆治、北別府学、山田久志の5氏だ。

 選考基準は、15勝以上、150奪三振以上、10完投以上、防御率2.50以下、200投球回以上、25登板以上、勝率6割以上の7項目である。ジョンソンは、15勝、防御率2.15、26登板、勝率.682で選考基準のうち4項目をクリア。巨人の菅野智之も189奪三振、2.01以下(いずれもリーグトップ)、26登板、勝率.600で4項目クリアしたが、勝利数が9勝と2桁に届かなかった。そのため、選考の過程では2000年以来の「該当者なし」という意見もあったが、最終的には全会一致でジョンソンに決まったという。

 選考基準に関し、堀内選考委員長は「沢村賞は今年で70回目。ひとつの区切りにきている。本質的なところは変えないが、少し基準を見直す時期にきていると思う」とコメントした。

 たしかに、選考基準をすべて満たした沢村賞投手は、過去に10人(計12回)しかいない。投手の分業制が確立され、今季の広島のように強力なリリーフ陣を擁するチームがペナントを制することも増えた。そのため、以前と比べて完投数が減っている。

 2001年以降に絞っても、10完投以上を記録し沢村賞を受賞した投手は2001年の松坂大輔(西武)、2007年のダルビッシュ有(日本ハム)、2009年の涌井秀章(西武)、2011年の田中将大(楽天)の4人だけだ。また、投球回が200イニング未満で沢村賞に選ばれた投手もジョンソンを含めて6人である。

 これらの数字を見る限り、堀内氏が指摘するように選考基準を見直す時期がきているようだ。


理解もできるが、欠点もあるクオリティースタートという基準


 新たな選考基準として、堀内氏はクオリティースタートをあげた。先発投手が6イニング以上投げ、自責点を3以下に抑えた時に記録されるもので、それを先発登板数で割ったものをクオリティースタート率(QS%)という。最近、メディアで見聞きする機会が増えてきた言葉だ。今季、両リーグトップのQS%はジョンソンで92.3%という驚異的な数字を残した。この点からもジョンソンは沢村賞にふさわしいといえる。

 ただ、極論になるが、ある投手がすべての先発登板を6回3自責点で終えるとする。その時のQS%は100%だが、防御率は4.50かもしれない。そう考えると、QS%は、投手の能力を計るものとしては少々物足りない。

 そこで提案したいのがWHIP(※1)という指標だ。被安打と与四球を足し、投球イニングで割るだけの簡単に算出できる指標で、走者を許さない投手ほど優秀という観点では、WHIPは最もかなりわかりやすい指標と言える。

 しかし、長打も単打や四球と同様にカウントされるため、長打を打たれやすい投手などはWHIPが示す数値ほどの成績は残せないとも考えられる。また、被安打は自チームの守備力に左右されるため、WHIPに否定的な意見もあることも頭に入れておきたい。

 守備力に影響を受けない指標という点では、K/BB(※2)があげられる。奪三振数を与四球数で割り、投手の純粋な能力を表すと考えられている。三振を多く奪えて、四球が少ない投手ほど優秀というわけだ。

 ちなみに、今季12球団トップのWHIPを記録したのは菅野で0.99。K/BBも菅野で7.27。ジョンソンはWHIP1.13でリーグ4位、K/BBは2.88で同5位である。
 
 数年前にも選考基準に関する議論があったが、結局変わらないまま時間だけが過ぎていった。時代とともに、野球の傾向も変わってくる。その時々に応じた基準で最高の投手を決めることも必要なのではないだろうか。

(※1)WHIP(Walks plus Hits per Inning Pitched)
1イニングあたりに何人の走者を許したかを表す数値。
(被安打+与四球)÷投球回で算出する。一般的に先発投手であれば1.00未満で球界を代表するエース級、1.20未満ならエース級、1.40以上なら問題ありと言われている。

(※2)K/BB(Strikeout to walk ratio)
奪三振を与四球で割った数値。投手の制球力を示すもので、一般的に3.5を超えると優秀と言われている。

文=京都純典(みやこ・すみのり)

【PR】プロ野球を観戦するなら「DAZN Baseball」

「DAZN Baseball」とは、月額2,300円(税込)でDAZNのプロ野球コンテンツをすべて楽しめるプランです(月々払いの年間プランのみ)。

プロ野球だけを楽しみたい方は、月額4,200円(税込)のDAZN Standard​よりも1,900円お得に視聴できます。

POINT

春季キャンプ、オープン戦、公式戦、交流戦、CSまで余さず堪能できる!

② オフシーズンもドキュメンタリーやバズリプレイなどコンテンツが充実!

毎月2,300円でライブ配信・見逃し配信・ハイライトまで視聴可能!

【PR】「DMM×DAZNホーダイ」でプロ野球を観よう!

「DMM×DAZNホーダイ」とは、DMMプレミアムとDAZN Standardをセットで利用できるプラン。

単体契約ならDMMプレミアム月額550円(税込)、DAZN Standard月額4,200円(税込)のところ、本プランなら月額3,480円(税込)だからとってもお得です。

POINT

① 「DMM×DAZNホーダイ」なら単体契約より月額1,270円(税込)も安い!

② DAZNだけの契約と比較しても月額720円(税込)お得に楽しめる!

③ 新規入会月から最大3カ月間、「DMMポイント」を550ポイント付与!

ポスト シェア 送る
  • ALL
  • De
  • 西