再び打撃フォームにメス
今シーズン、実に25年ぶりとなるリーグ優勝を成し遂げた広島。不動の3番打者としてリーグ最強打線を支えた丸佳浩は今、秋季キャンプで打撃フォームの改造に取り組んでいる。
2015年、前年のブレイクから一転して大不振に苦しんだ丸。どうにか打棒を取り戻せないかと、打撃改造を試みたのが昨秋のことだ。
グリップの位置を高く、バットを肩に担ぐようなスタイルで右足を高く上げる新フォーム。新たな打法をものにした男は、今シーズンきっちりと復活を果たしてみせた。
ところが、いま取り組んでいる形はまるで違うもの。バットを立て、「ヒッチ」と呼ばれるグリップを下げる動作をなくし、右足はあまり上げない。簡単に言えば、あの苦しんだ2015年の打撃フォームに限りなく近いスタイルだ。
せっかく良くなってきたものをまた変えてしまうのか、と思うファンもきっといることだろう。しかし、実戦のなかで本人にしか感じられないものがいくつもあったはず。ただ単に以前のフォームに戻すというわけではない。
打点は大きく伸ばすも...?
復活を果たした今シーズンの丸。たしかに前年と比較すれば数字を大きく伸ばしているが、輝きを放った2014年と比べるとどうだろうか。以下は2014年から今季までの丸の打撃成績だ。
【丸佳浩・打撃成績】
2014年:打率.310 本塁打19 打点67 四球100 三振95 出塁率.419 長打率.491
2015年:打率.249 本塁打19 打点63 四球94 三振143 出塁率.361 長打率.413
2016年:打率.291 本塁打20 打点90 四球84 三振107 出塁率.389 長打率.481
本塁打は自身初の20本を記録し、90打点もこれまでの最多だった2014年の67と比べて大きく上積みしている。ただし、打率や四球、三振、出塁率、長打率などは2014年の数字には及ばず、安定感という意味においてはキャリアハイにまでは至らなかった。
相手投手のクイックに差し込まれる場面が見受けられたこともあり、もっとシンプルな形にすることで、今季の勝負強さに加えて確実性を取り戻そうというのが“改造”の最大の狙いのようだ。
数字的には、3番打者として十分に及第点をクリアしている。しかし、自身が見据える到達点はまだまだ上にあるのだろう。
悲願の優勝を成し遂げたチームの中で、その大きな原動力のひとりだった丸に対する他球団の研究はさらに進む。来年は警戒がより高まるのも間違いない。今年となにも変わらぬまま来季に臨んだとしても、数字を伸ばせるとは限らないのだ。
とはいえ、実績を残している選手が打撃フォームに手を入れることはリスクが伴う。大きな勇気も必要だ。だが、そのリスクをこれまでも恐れなかったからこそ、いまの丸があるとも言える。
不動のレギュラーとなっても決しておごることなく、常に理想を追求し続ける姿勢。丸佳浩という男は、“プロ意識”の塊である。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)