久々にストーブリーグの中心に巨人がいる。
先月は日本ハムとの交換トレードで吉川光夫と石川慎吾を獲得し、FA宣言していた山口俊(DeNA)と森福允彦(ソフトバンク)の入団にこぎつけ、さらに陽岱鋼(日本ハム)にも正式オファー。4日には小山雄輝と楽天の若手野手・柿沢貴裕の交換トレードが成立。そして新外国人選手のケーシー・マギーとの契約合意を発表した。
2012年12月には一部スポーツ紙で「巨人マギー獲得」と報じられたものの、楽天に大逆転され目前で逃した助っ人。そのマギーは入団1年目の13年には打率.292、28本、93打点という好成績で楽天初のリーグ優勝に貢献、日本シリーズでも巨人の前に立ちはだかった。
メジャー復帰後の14年には160試合に出場すると打率.287、4本、76打点でカムバック賞を受賞。ここ2シーズンはMLB数球団を渡り歩くジャーニーマンだったが、言わば巨人からしたら4年越しの恋人の獲得だ。このマギーの推定年俸は1億9000万円。金額だけ見たら、先日残留発表したギャレットの1億6000万円(前年比1億4500万円減)を上回る。
巨人のマギー獲得には2つの理由が考えられる。まず「阿部慎之助と村田修一のバックアッパー兼ライバル」の役割。今季後半戦は「4番ファースト」に座ることか多かった阿部は来季38歳、3割25本をクリアして三塁手ベストナインとGグラブをダブル受賞の村田も36歳だ。
特に阿部は満身創痍で、今季も右肩痛で開幕から50試合を欠場した。2人とも適度な休養日を与えながらの起用が望ましいが、高橋由伸や井端弘和が引退したチームの控え選手層は薄く無理に出続けるしかなかった。そこで3塁と1塁を守れて、打撃も日本での実績があるマギーの補強というわけだ。
加えてもうひとつの獲得理由は「外国人枠争いの活性化」である。マシソン、マイコラス、ギャレット、クルーズで1軍枠は決定的と思われていたところにマギーが入ってくる。マイコラスとクルーズはともに来季2年契約の2年目。今シーズンのようなムラッ気のあるプレーぶりでは1軍入りすら危うい。
ギャレットにしてもDeNAと対戦したCSでは11打数無安打と完全に攻略され2年目に不安を残した。中途半端な助っ人補強ではなく、大物マギーの存在が彼らの危機感に火をつけることだろう。
ならば、マギーの加入はプラス要素だけなのだろうか・・・。マイナス要素としては、若手プロスペクトの岡本和真から出場機会を奪ってしまう点が挙げられる。今季はイースタン打点王を獲得するも、1軍ではわずか3試合の出場に終わった背番号38。14年ドラ1スラッガーの岡本も早いもので来季3年目を迎える。
近代野球で将来的にクリーンナップを打つような高卒スラッガーは、ほとんどが3年目にはそれなりの出場機会を得て、1軍でも成績を残しているケースが多い。例えば山田哲人(ヤクルト)は3年目の13年94試合/396打席で打率.283を記録、同じく筒香嘉智(DeNA)は12年108試合/446打席で10本塁打を放っている。
巨人は過去にどんなに巨大補強をしても、長嶋監督時代にはスタメンに松井秀喜という若き生え抜きスラッガーが君臨していたし、原監督の時にも坂本勇人という才能溢れるショートストップがいた。いわば将来的にチームの核となれる選手だ。だが、由伸監督にはそういう若手選手がいない。
松井は3年目にはすでにフル出場してクリーンナップを任されていたし、坂本も3年目には打率.306、18本塁打の成績で遊撃手ベストナインに選出。その大事な3年目のシーズンを岡本はどう過ごすことになるのだろうか?
果物と同じで若手選手も旬の時期を逃すとやがて2軍で腐る。果たして、守備の不安に目を瞑り岡本のレフト起用もあるのか? それともガチンコで阿部、村田、マギーらにポジション争いを挑み一気に時代を変えるのか。
2017年は由伸監督にとって、そして岡本和真にとって、自身と巨人の未来を左右する重要な1年になるだろう。
文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)
先月は日本ハムとの交換トレードで吉川光夫と石川慎吾を獲得し、FA宣言していた山口俊(DeNA)と森福允彦(ソフトバンク)の入団にこぎつけ、さらに陽岱鋼(日本ハム)にも正式オファー。4日には小山雄輝と楽天の若手野手・柿沢貴裕の交換トレードが成立。そして新外国人選手のケーシー・マギーとの契約合意を発表した。
4年越しの恋人
メジャー復帰後の14年には160試合に出場すると打率.287、4本、76打点でカムバック賞を受賞。ここ2シーズンはMLB数球団を渡り歩くジャーニーマンだったが、言わば巨人からしたら4年越しの恋人の獲得だ。このマギーの推定年俸は1億9000万円。金額だけ見たら、先日残留発表したギャレットの1億6000万円(前年比1億4500万円減)を上回る。
マギー獲得の理由
巨人のマギー獲得には2つの理由が考えられる。まず「阿部慎之助と村田修一のバックアッパー兼ライバル」の役割。今季後半戦は「4番ファースト」に座ることか多かった阿部は来季38歳、3割25本をクリアして三塁手ベストナインとGグラブをダブル受賞の村田も36歳だ。
特に阿部は満身創痍で、今季も右肩痛で開幕から50試合を欠場した。2人とも適度な休養日を与えながらの起用が望ましいが、高橋由伸や井端弘和が引退したチームの控え選手層は薄く無理に出続けるしかなかった。そこで3塁と1塁を守れて、打撃も日本での実績があるマギーの補強というわけだ。
加えてもうひとつの獲得理由は「外国人枠争いの活性化」である。マシソン、マイコラス、ギャレット、クルーズで1軍枠は決定的と思われていたところにマギーが入ってくる。マイコラスとクルーズはともに来季2年契約の2年目。今シーズンのようなムラッ気のあるプレーぶりでは1軍入りすら危うい。
ギャレットにしてもDeNAと対戦したCSでは11打数無安打と完全に攻略され2年目に不安を残した。中途半端な助っ人補強ではなく、大物マギーの存在が彼らの危機感に火をつけることだろう。
マギー入団による懸念点
ならば、マギーの加入はプラス要素だけなのだろうか・・・。マイナス要素としては、若手プロスペクトの岡本和真から出場機会を奪ってしまう点が挙げられる。今季はイースタン打点王を獲得するも、1軍ではわずか3試合の出場に終わった背番号38。14年ドラ1スラッガーの岡本も早いもので来季3年目を迎える。
近代野球で将来的にクリーンナップを打つような高卒スラッガーは、ほとんどが3年目にはそれなりの出場機会を得て、1軍でも成績を残しているケースが多い。例えば山田哲人(ヤクルト)は3年目の13年94試合/396打席で打率.283を記録、同じく筒香嘉智(DeNA)は12年108試合/446打席で10本塁打を放っている。
巨人は過去にどんなに巨大補強をしても、長嶋監督時代にはスタメンに松井秀喜という若き生え抜きスラッガーが君臨していたし、原監督の時にも坂本勇人という才能溢れるショートストップがいた。いわば将来的にチームの核となれる選手だ。だが、由伸監督にはそういう若手選手がいない。
松井は3年目にはすでにフル出場してクリーンナップを任されていたし、坂本も3年目には打率.306、18本塁打の成績で遊撃手ベストナインに選出。その大事な3年目のシーズンを岡本はどう過ごすことになるのだろうか?
勝負の2017年
果物と同じで若手選手も旬の時期を逃すとやがて2軍で腐る。果たして、守備の不安に目を瞑り岡本のレフト起用もあるのか? それともガチンコで阿部、村田、マギーらにポジション争いを挑み一気に時代を変えるのか。
2017年は由伸監督にとって、そして岡本和真にとって、自身と巨人の未来を左右する重要な1年になるだろう。
文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)