コラム 2016.11.28. 11:15

阿部、内海、杉内、山口…「5冠達成!2012年の原巨人」は今

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2012年に日本一を達成した当時の巨人(C)KYODO NEWS IMAGES

今オフは主力が軒並みダウン


 巨人の厳冬更改が話題だ。

 V3時代の主力選手が軒並み大幅ダウンで更改。阿部慎之助は6600万円ダウンの推定2億6000万円、34歳の内海哲也は4億円から減額制限を超える50%ダウンの2億円で陥落した。

 現時点でチーム最高年俸が、自身初の首位打者で1億円アップを勝ち取った坂本勇人の推定3億5000万円というところに時の流れを感じる。

※金額は推定


4年前の主力たちの現在


 わずか4年前、原辰徳が指揮を執り、阿部や内海が投打の中心となりチームを牽引していた頃の巨人は交流戦優勝に始まり、ペナントレース、 クライマックスシリーズ、日本シリーズ、アジアシリーズまですべて制覇。史上初の5冠達成とまさに強さのピークにあった。今回はそんな球史に残る5冠チーム「2012年の原巨人」を支えた選手たちの活躍とその後を追ってみよう。

▼ 阿部慎之助(当時33歳)
12年:138試 率.340 27本 104点 OPS.994
16年: 91試 率.310 12本 52点 OPS.850

 12年は前年までの小笠原道大(現中日2軍監督)とラミレス(現DeNA監督)中心の編成から、当時33歳のキャッチャー阿部が中心のチームへと大きく変貌したシーズンだった。彼らに代わり4番に座った背番号10が打率.340、27本、104打点の好成績でMVP、首位打者、打点王、最高出塁率のタイトルを獲得。原監督とともに正力松太郎賞、内海とは最優秀バッテリー賞にも選出された。このシーズンから「巨人はキャプテン阿部のチーム」という言葉を頻繁に聞くようになる。

 翌13年も32本塁打を放ちリーグ連覇に貢献、年俸は球界トップの6億円まで上昇。だが、V3翌年の15年から満身創痍の身体で一塁転向と捕手再転向を繰り返し、さらに今季も右肩の怪我で出遅れ、5月末の一軍復帰後は一塁専任に。後半戦は主に4番打者として規定打席不足ながら打率3割をマークするも、12本塁打はプロ入り以来2番目に少ない数字。来季38歳の阿部は、一塁手としての起用が有力視されている。

▼ 内海哲也(当時30歳)
12年:28試 15勝6敗 防1.98
16年:18試 9勝6敗 防3.94

 前年に続き2年連続の最多勝、そして防御率1点台とエースの座を確固たるものにした12年の内海は、セ・パ交流戦と日本ハムと対戦した日本シリーズで立て続けにMVP受賞。オフには年俸4億円の4年契約を結び、まさに投手として絶頂期にあった。

 しかし13年13勝、14年7勝と徐々に成績を落とし、15年には開幕前に負傷した左前腕部炎症の影響もありわずか2勝に終わる。4年契約最終年の今季はオープン戦で打ち込まれ限界説も囁かれたが、5月中旬に一軍合流すると9勝を挙げ意地を見せた。

 気が付けば、82年生まれの34歳内海が生え抜き投手最年長に。93年に導入され2006年まで14年間続いた逆指名制度、自由獲得枠、希望入団枠制度のドラフトで、巨人を逆指名した選手はのべ22名。そのうち、今もチームに在籍するのは00年1位逆指名の阿部慎之助と03年自由枠の内海のみである。

▼ 杉内俊哉(当時32歳)
12年:24試 12勝4敗 防2.04
16年:一軍登板なし

 11年オフに「4年20億円」「背番号18」の破格の条件でソフトバンクから巨人にFA移籍して来た球界を代表するサウスポーは、巨人1年目の5月30日楽天戦でノーヒットノーラン達成。シーズン終盤は左肩の違和感で戦列を離れるも172奪三振で最多奪三振のタイトルに輝いた。

 その後3年連続の二桁勝利でV3に貢献。しかし、昨年10月に右股関節の手術を行い、契約更改ではプロ野球史上最大の4億5000万円減の年俸5000万円+出来高でサイン。今季はリハビリに費やし、一軍登板なしに終わった。

 同じく11年オフに横浜から移籍して来た同学年の村田修一は今季打率.302、25本塁打でベストナインとゴールデングラブ賞をダブル受賞。ともに九州出身の杉内と村田は高校時代にふたりきりで夏祭りに遊びに行ったこともあるという。そんな松坂世代も来季37歳。2017年、杉内の再起はなるか?

▼ 山口鉄也(当時29歳)
12年:72試 3勝2敗 47HP 防0.84
16年:63試 1勝6敗 20HP 防4.88

 この年の山口は144試合のちょうど半数の72試合に登板。3勝2敗5セーブ、防御率は驚異の0.84。47ホールドポイントで最優秀中継ぎ投手賞を獲得。さらに中日とのCSファイナルステージでは4試合に登板。日本ハムとの日本シリーズでも3試合を投げ胴上げ投手という鉄腕ぶり。まさに原巨人の栄光は、山口鉄也の左腕に支えられていたと言っても過言ではない。

 しかし、14年から勤続疲労で徐々に数字を落とし、今季は前人未到の9年連続60試合登板を達成するも、全盛期の状態とは程遠く、防御率4.88と屈辱的な1年となってしまった。チームは「ポスト山口」として、FAで左のリリーバー森福允彦(ソフトバンク)の獲得が濃厚。巨人史上最強セットアッパーと称された背番号47もプロ12年目の来季は正念場のシーズンを迎える。

巨人に訪れた転換期


 こうして見ると2012年は阿部、内海、杉内、山口が野球選手としてピークを迎えており、それに加えて若手時代の坂本勇人と長野久義の2人が173安打で最多安打のタイトルを分け合い、当時24歳の沢村拓一も2年連続二桁勝利を記録。同年秋のドラフトでは現エース菅野智之が入団。選手層を見ても、原巨人が最も充実していた時期ではないだろうか。

 そして、あれから4年が経ち、当時の主力陣がそれぞれ年を重ね、今度は坂本や菅野があの頃の阿部や内海のような立ち位置でプレーすることを求められるようになった。一時代を築いたチームも時代とともに変化し続ける。

 もしかしたら、11年から12年にかけて原巨人がオガラミから阿部のチームへと世代交代をしたように、16年から17年は名実ともに阿部から坂本中心のチームへと変貌していくターニングポイントの1年になるのかもしれない。

文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)

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