この時期になると、寂しい話題がニュースになる。来季の戦力構想外であることを伝え、契約を結ばない旨を告げるいわゆる“戦力外通告”。選手もファンもその知らせに怯える日々であるが、その中で一つの傾向が目立っている。
各種報道にある「来季の支配下選手契約を結ばない旨を伝えた」という文字。通常の戦力外通告では「来季の契約を結ばない」という文言が用いられるが、そうではない。違いは何かと言うと“支配下”という部分。要するに支配下選手としての契約を打ち切り、育成契約を結び直すということを意味している。
育成枠と呼ばれるNPBの育成選手制度は2005年に創設。1チームの選手登録上限が70人と定められているため、プロ野球選手の裾野を広げることと、将来有望な若手選手の育成という観点から球団の選手契約枠を拡大するために設けられた制度である。
しかし近年、その活用方法には疑問を感じざるを得ない。
今年は特に「支配下選手契約を結ばない旨」を通告し、育成契約を結び直そうとするケースをよく目にする。現時点で発表されているのは以下の通りである。
・田中太一(巨人)投手/21歳
・久本祐一(広島)投手/35歳
・佐藤峻一(オリックス)投手/23歳
・近藤一樹(オリックス)投手/31歳
・山田修義(オリックス)投手/23歳
・園部聡(オリックス)内野手/19歳
・高堀和也(楽天)投手/27歳
・宮川将(楽天) 投手/24歳
・小斉祐輔(楽天)内野手/31歳
・島井寛仁(楽天)外野手/24歳
・柿沢貴裕(楽天)外野手/20歳
・林崎遼(西武)内野手/26歳
現時点でこれだけの選手が通常の戦力外ではなく、育成契約を前提とした自由契約になっている。実際育成契約を結ぶかどうかは選手が決定することであり、全員がそうなるかどうかは不明であるが、多くは育成契約を結び直してチームに残ることを選択すると見られる。
このうち、広島のベテラン左腕・久本はオフに左肘の手術を控えており、オリックスのルーキー・園部は8月に受けた右肘の肘頭閉鎖不全反転骨移植の手術の影響から、楽天の宮川は今季一軍で3勝をマークするも10月15日に右肘の手術を受けたこと、西武の林崎も脱臼癖になっている左肩の手術を今月上旬に行ったことが原因とされている。
過去にも、巨人の脇谷亮太(当時)が2011年のオフに右肘の手術を行い、一度育成選手になった。結局その一年後の2012年オフには再び支配下登録され、現在は西武で支配下選手としてプレーしている。
このように怪我や手術によって完治に時間がかかる支配下選手を一度育成枠に移すという形は、ここ最近珍しいことではなくなってきた。
支配下登録の枠は70人と決まっているだけに、いつ復活するかわからない選手で貴重な一枠を消費したままシーズンを戦うのは不利を被る、というのが大きな理由の一つであろう。もしくは、年俸上限の低くなる育成契約にすることでコストの削減を目論む球団もあるのかもしれない。いずれにしても、そのために支配下登録していた選手を再び育成枠に戻すというのは、見ているファンからしたら違和感を感じるところである。
今年も広島の久本が35歳で育成契約を結ぼうとしているが、過去には2011年にソフトバンクの藤田宗一が39歳で育成契約を結んだということもあった。これは育成枠を設けるにあたっての大きな動機となった「将来の有望な若手選手らを育成する観点」からはかけ離れた活用の仕方であると言えるだろう。
一方で前述した脇谷のように、育成枠のおかげで復帰までの時間を確保できた例や、将来性は高いが故障を抱えるドラフト候補選手を思い切って指名できるようになったのは、現行の育成枠におけるポジティブな側面であることも事実。これらを勘案すると、『育成』と『リハビリ』が入り混じっていることに問題があるようにも感じる。
新人王に輝いた巨人の山口鉄也や松本哲也のように、育成枠出身の選手がプロの第一線で活躍する“サクセスストーリー”が一つの理想形としてあるものの、当初の方針から外れた活用もなされているというのが今の育成枠制度。経営努力を重ねている球団にとって、厳しい契約社会を生き抜く選手達にとって、そして見ているファンにとって、新しい仕組みを考える時期が訪れているように感じる。日本プロ野球の未来のために、10年目を迎える育成枠のあり方についてはまだまだ改善の余地がある。
各種報道にある「来季の支配下選手契約を結ばない旨を伝えた」という文字。通常の戦力外通告では「来季の契約を結ばない」という文言が用いられるが、そうではない。違いは何かと言うと“支配下”という部分。要するに支配下選手としての契約を打ち切り、育成契約を結び直すということを意味している。
育成枠と呼ばれるNPBの育成選手制度は2005年に創設。1チームの選手登録上限が70人と定められているため、プロ野球選手の裾野を広げることと、将来有望な若手選手の育成という観点から球団の選手契約枠を拡大するために設けられた制度である。
しかし近年、その活用方法には疑問を感じざるを得ない。
今年は特に「支配下選手契約を結ばない旨」を通告し、育成契約を結び直そうとするケースをよく目にする。現時点で発表されているのは以下の通りである。
・田中太一(巨人)投手/21歳
・久本祐一(広島)投手/35歳
・佐藤峻一(オリックス)投手/23歳
・近藤一樹(オリックス)投手/31歳
・山田修義(オリックス)投手/23歳
・園部聡(オリックス)内野手/19歳
・高堀和也(楽天)投手/27歳
・宮川将(楽天) 投手/24歳
・小斉祐輔(楽天)内野手/31歳
・島井寛仁(楽天)外野手/24歳
・柿沢貴裕(楽天)外野手/20歳
・林崎遼(西武)内野手/26歳
現時点でこれだけの選手が通常の戦力外ではなく、育成契約を前提とした自由契約になっている。実際育成契約を結ぶかどうかは選手が決定することであり、全員がそうなるかどうかは不明であるが、多くは育成契約を結び直してチームに残ることを選択すると見られる。
このうち、広島のベテラン左腕・久本はオフに左肘の手術を控えており、オリックスのルーキー・園部は8月に受けた右肘の肘頭閉鎖不全反転骨移植の手術の影響から、楽天の宮川は今季一軍で3勝をマークするも10月15日に右肘の手術を受けたこと、西武の林崎も脱臼癖になっている左肩の手術を今月上旬に行ったことが原因とされている。
過去にも、巨人の脇谷亮太(当時)が2011年のオフに右肘の手術を行い、一度育成選手になった。結局その一年後の2012年オフには再び支配下登録され、現在は西武で支配下選手としてプレーしている。
このように怪我や手術によって完治に時間がかかる支配下選手を一度育成枠に移すという形は、ここ最近珍しいことではなくなってきた。
支配下登録の枠は70人と決まっているだけに、いつ復活するかわからない選手で貴重な一枠を消費したままシーズンを戦うのは不利を被る、というのが大きな理由の一つであろう。もしくは、年俸上限の低くなる育成契約にすることでコストの削減を目論む球団もあるのかもしれない。いずれにしても、そのために支配下登録していた選手を再び育成枠に戻すというのは、見ているファンからしたら違和感を感じるところである。
今年も広島の久本が35歳で育成契約を結ぼうとしているが、過去には2011年にソフトバンクの藤田宗一が39歳で育成契約を結んだということもあった。これは育成枠を設けるにあたっての大きな動機となった「将来の有望な若手選手らを育成する観点」からはかけ離れた活用の仕方であると言えるだろう。
一方で前述した脇谷のように、育成枠のおかげで復帰までの時間を確保できた例や、将来性は高いが故障を抱えるドラフト候補選手を思い切って指名できるようになったのは、現行の育成枠におけるポジティブな側面であることも事実。これらを勘案すると、『育成』と『リハビリ』が入り混じっていることに問題があるようにも感じる。
新人王に輝いた巨人の山口鉄也や松本哲也のように、育成枠出身の選手がプロの第一線で活躍する“サクセスストーリー”が一つの理想形としてあるものの、当初の方針から外れた活用もなされているというのが今の育成枠制度。経営努力を重ねている球団にとって、厳しい契約社会を生き抜く選手達にとって、そして見ているファンにとって、新しい仕組みを考える時期が訪れているように感じる。日本プロ野球の未来のために、10年目を迎える育成枠のあり方についてはまだまだ改善の余地がある。