現地時間8日に行われたオープン戦・ヤンキース－ナショナルズ戦の2回にそれは起こった。

　ナショナルズの7番ホセ・ロバトンが変化球を空振りした際、バットが手からすっぽ抜け、ヤンキースが陣取る一塁側ダグアウトを越えてスタンドに飛び込んだ。バットは内野席で観戦中の女性ファンに直撃。試合は続行したが、一時騒然となった。

　ヤンキースの面々が心配そうにベンチから乗り出す中、ジョー・ジラルディ監督はバットを戻そうとした警備員に対して女性にプレゼントするように指示（バットはナショナルズのロバトンの持ち物であったが…）。一塁側からはその対応に拍手が起きた。

　さらにイニング終了後、臨時コーチを務めるヤンキースの“レジェンド”レジー・ジャクソン氏はベンチから観客席へ出て行くと、バットが直撃した女性の元へ自らの足で訪問。直接手渡しでサインボールをプレゼントした。

　レジー・ジャクソン氏といえば、“Mr.オクトーバー”の異名を取る伝説の選手。有名なのは、1977年にヤンキースの選手として出場したドジャースとのワールドシリーズ。王手をかけて迎えた第6戦ですべて初球打ちでの3打席連続本塁打という離れ業をやってのけ、チームを15年ぶりの世界一へと導いた。そのシリーズは打率.450、5本塁打で8打点と大暴れで、自身2度目のワールドシリーズMVPを獲得。1993年には殿堂入りも果たしている。

　日本でも、観戦中に飛んできたボールやバットによるケガでの問題というのが増えている近年。こうした粋なはからいや対応というのは、その後の問題を最小限に抑えるためのヒントになるかもしれない。