2010年以降は“ノーマーク勢”が盗塁王に?
昨季セ・リーグの盗塁王に輝いたのは、34盗塁を記録したヤクルトの山田哲人だった。3割・30本・30盗塁のトリプルスリーを達成し、プロ野球史上初となる本塁打王と盗塁王のダブル獲得という快挙であった。
そんな山田に次いで2位につけたのがDeNAの梶谷隆幸で28盗塁、3位は中日・大島洋平の22盗塁だった。彼らは盗塁王争いの“常連”と言える存在ではあるのだが、2010年以降のセ・リーグ盗塁王を見てみると、梵英心(広島)、藤村大介(巨人)、そして大島、梶谷、山田と毎年顔ぶれが変わっている。
そんな彼らにはある“共通点”がある。それが、「前年は全く盗塁王争いに加わっていなかった」ということだ。以下は、近年の盗塁王によるタイトル獲得年と獲得前年の比較である。
・梵英心(広島)
2010年:43盗塁
2009年:14盗塁
・藤村大介(巨人)
2011年:28盗塁
2010年:0盗塁
・大島洋平(中日)
2012年:32盗塁
2011年:8盗塁
・丸佳浩(広島)
2013年:29盗塁
2012年:14盗塁
梶谷隆幸(DeNA)
2014年:39盗塁
2013年:7盗塁
山田哲人(ヤクルト)
2015年:34盗塁
2014年:15盗塁
上記の通りで、盗塁王を獲得する前年に20盗塁以上を記録した選手は誰ひとりとしていない。最高でも、昨年の盗塁王である山田哲人が2014年に記録した15盗塁。2011年にタイトルを獲得した藤村に至っては、2010年は一軍出場すらなく、一軍デビューの年に盗塁王を獲得しているのだ。
また、近年の特徴としては、大島や丸、梶谷といった“レギュラー定着未満”の選手たちが受賞しているという点も挙げられる。
2013年の後半に台頭した梶谷だが、その年は打撃のほうで打率.346、16本塁打、44打点と猛アピール。盗塁数は7に留まった。それが、一軍に定着した2014年には一気に32個増加の39盗塁。それからレギュラーの座に定着している。
横田、野間、立岡に期待!
これを踏まえると、今年も「前年に盗塁王争いに加わらなかった選手」かつ「一軍で定位置を築いていない選手」が気になるところ。
中でも注目は、阪神のプロ3年目・横田慎太郎だ。
昨シーズンまで一軍出場の経験はなく、二軍で腕を磨いてきた。打撃に期待が集まる横田であるが、オープン戦では11安打中4本は内野安打で稼ぐなど、俊足を披露している。
オープン戦の盗塁数を見ても、ここまでチームトップの4つを記録。高代ヘッドコーチもスタートのタイミングを高く評価しており、盗塁のセンスも伺える。今年レギュラー定着できれば、2011年の藤村のようにデビューイヤーでのタイトル獲得というのも現実味を帯びてくる。
広島の2年目・野間峻祥も、その足に大きな可能性を秘めた選手。ルーキーイヤーの昨シーズンは、10度の盗塁機会で失敗は2つだけ。率にして8割と高い成功率を誇った。こちらも横田同様、出場機会を増やすことができれば面白い存在だ。
また、昨シーズンの後半から巨人のトップバッターを任された立岡宗一郎もいる。昨年は91試合に出場し、打率.304をマーク。上述の2人よりも一軍でやってきた経験を持っており、それでいて16個の盗塁を記録した。こちらも“候補”に挙げてふさわしい選手である。
2008年から2009年にかけてヤクルトの福地寿樹が獲得して以来、毎年入れ替わっている盗塁王の座。今年は山田がその座を守るのか、それともまた新たなスピードスターが誕生するのか。セ・リーグの盗塁王争いの行方から目が離せない。