メタリカで勝利を確信したヤンキースファン
スタジアムに、ロックバンド・メタリカの名曲「エンターサンドマン」が流れる。そのイントロを聴いただけで、スタジアムのファンは総立ちになり、そして勝利を確信する。
鳴り響く歓声の中、外野ブルペンからさっそうと登場するのは、ヤンキースの守護神マリアノ・リベラ。松井秀喜が所属した2000年代前半、ヤンキースの勝利を象徴するシーンが、リベラが登場するこの瞬間だった。
選手交代を“音”だけで判断する。この“音”が誰のものなのか。この音を自分に結び付けた選手は、日米あわせてもこのリベラ以外思い浮かばない。ニューヨーク市民は今でもこの「エンターサンドマン」を聴くと、真っ先にリベラの顔を思い出すという。
ヤンキースで言えば、松井秀喜は自身の愛称と結び付け「ゴジラのテーマ」を使用。田中将大は愛してやまないアイドル・ももいろクローバーZの曲を流している。
日本でも各選手には何らかしらのテーマ曲があり、打席に向かうとき、そしてマウンドに向かう時に、思い思いの曲が流れている。この選曲というのは、基本的には選手個人に任せられている。基本的には、田中のように自分の好きなアーティストの曲を選曲する選手が多く、こだわりが強い選手は打席ごとに曲を変えている。
このテーマ曲、特に打者の場合は打席に向かう間の少しの時間しか流れないため、あまり印象には残らないもの。それでも、選手にとっては気合を入れなおすため、そして集中力を増すための大事な“道具”となる。
昔でいえば、元巨人の仁志敏久は格闘技が好きで、よくプロレスラーの入場テーマを使用していた。「テンションが上がるし、これから闘うんだという気持ちになるんだ」と話していたのを思い出す。
日本でもこの曲ならこの選手、というおなじみのものはあれど、リベラほど「曲=選手」のイメージが焼き付いた選手はいない。
リベラ登場のような、あの曲が流れただけで鳥肌が立つような期待感、そして球場の盛り上がり。ファンにとって、選手の登場シーンはたまらないものである。