大学時代は「エース」と「4番」
2日、Koboスタ宮城で行われた楽天-西武の2回戦。雨の中で行われた試合は、楽天が17安打で15得点を挙げる効率良い攻撃で西武を圧倒。2連勝でカード勝ち越しを決めた。
この試合、楽天の先発は塩見貴洋。6年目左腕は大量援護に守られながらも7回2失点と試合を作り、嬉しい今シーズンの初勝利を掴んだ。
この塩見が西武戦で登板する時、ひとつ“密かな”楽しみがある。それが西武のリードオフマン・秋山翔吾との対決だ。
ともに八戸大学出身の同級生で、田中将大や前田健太らと同世代のいわゆる“88年世代”の2人。2010年のドラフト会議にて、同大学のエースだった塩見は楽天から、4番を務めた秋山は西武から指名を受けてプロ入りを果たした。
一般的にあまり馴染みのない北東北大学野球連盟所属の八戸大から2人のプロ野球選手が誕生。これだけで騒ぎになってもおかしくないところだが、そこは“花の88年組”。黄金世代は大卒選手もすごかった。
早稲田大には斎藤佑樹(現日本ハム)、大石達也(現西武)、福井優也(現広島)の3本柱が君臨しており、全員がドラフト1位でプロ入り。ほかにも中央大の沢村拓一(現巨人)、佛教大の大野雄大(現中日)、東海大の伊志嶺翔大(現ロッテ)と、これだけの選手が大卒でドラフト1位指名を受けたのだ。
この中にあってはやや地味な印象も否めない塩見と秋山という2人ではあるが、この2人の“ライバル対決”は実におもしろい。
「負けたくない」一心でのし上がった秋山
ドラフト1位で指名を受けた塩見に対し、ドラフト3位の秋山は「負けたくない」と闘志を燃やした。
同じユニフォームを着て戦ってきた仲間との差を、“順位”という結果で如実に突きつけられたドラフト会議。塩見の名前が1巡目で呼ばれた際には駆け寄って祝福し、ドラフト会議終了後には2人で笑顔で報道陣のカメラの前に立った秋山であったが、その心の中には当然悔しさも混ざっていたに違いない。
「一軍の舞台で対戦して、打ち崩したい」…。4年間ともに戦った“戦友”が、“ライバル”に変わった瞬間だった。
迎えたプロ1年目、塩見は故障で出遅れたものの、5月に初登板・初勝利の華々しいデビュー。ローテーション入りを果たし、いきなり9勝を挙げれば、一方の秋山も球団の新人外野手では30年ぶりとなる開幕スタメン入りを果たすなど、110試合に出場。ともにルーキーイヤーから存在感を発揮した。
互いが待ち望んでいた“対決”は、1年目の2011年に実現。ここでは3の0、三振ひとつで塩見に軍配。“ドラ1入団”としての意地を見せつける。
それでも、「負けたくない」の一心でたゆまぬ努力を続けた秋山が徐々に台頭。そして2年目の2012年、ついに秋山は一軍の舞台で塩見から安打を放った。
以降、翌2013年は対戦なく終わったが、2014年は秋山が極度の不振に苦しみながらも、塩見からは9打数4安打と大当たり。シーズン最多安打記録を塗り替えた昨年も、対塩見は6打数2安打の.333と、いつの間にか秋山は塩見にとっての“天敵”となっていた。
そして迎えた2016年、秋山は最初の打席で追い込まれながらも左中間を突破する二塁打。3回の第2打席でも内野安打を放ち、今年も塩見を苦しめる。
ちなみに、ここまでの通算の対戦成績は、25打数の9安打。二塁打が2本、三塁打が1本で、本塁打はなく、三振が2つ。通算打率.360と秋山が優勢となっている。
誰もが知っているような名勝負とは言えないかもしれないが、互いが互いを意識し合い、闘志を燃やしてきたこの対決は“ライバル対決”と言って間違いない。
これから楽天と西武が対決する際には、是非ともこの知る人ぞ知る“八戸大同級生対決”に注目して見ていただきたい。