2015年、日本を席巻した“トリプルスリー”
昨年、球界のみならず日本中で話題になった「トリプルスリー」。その年の世相を反映した言葉を選ぶ「現代用語の基礎知識 選 2015ユーキャン新語・流行語大賞」の年間大賞にもなったこの偉業は、同一シーズンで打率3割・30本塁打・30盗塁を一人で記録するというもの。達成したのは山田哲人(ヤクルト)と柳田悠岐(ソフトバンク)の2選手だ。
同じシーズンに2人の達成者が誕生するのは、65年ぶりのことだった。そして2人は史上初となる「2年連続トリプルスリー」を目指すわけだが、好対照なスタートになった。
4月11日現在、山田の方は打率.327、4本塁打、4盗塁と上々の滑り出し。しかし、一方の柳田はというと、打率が.214、本塁打も1本で、3盗塁と精彩を欠いている。
昨年のフィーバーにより、日本での過去の達成者は度々紹介されることがあったが、メジャーの「トリプルスリー」については、日本ではあまり報道されていないように思う。
長い歴史の中で、日本プロ野球での達成者は10人。それに対し、メジャーは26度。回数にしたのは、複数回の達成者がいるためだ。
最近では、2012年にブリュワーズのライアン・ブラウンが打率.319、41本塁打、30盗塁で達成。実はブラウン、この前年にも打率.332、33本塁打、33盗塁でトリプルスリーを達成しており、2012年シーズンは自身2年連続2度目の達成であった。ブラウンは今季もブリュワーズの3番打者として元気にプレーしており、3度目の達成も期待されている。
また、同じく2012年にエンゼルスのマイク・トラウトも打率.326、30本塁打、49盗塁で達成した。そう、2012年はア・ナ両リーグから達成者が出ていたのだ。
しかも、トラウトは当時21歳。史上最年少での偉業達成というおまけ付きだった。トラウトも、今やチームのみならずメジャーを代表する打者として活躍中。この人も複数回の達成に期待ができるポテンシャルを持った選手だ。
メジャー最高のアーチストは、実は足も速かった!?
そもそも、「トリプルスリー」が難しいことは言うまでもない。
長距離打者はパワーがある分、体が大きく、足が遅いことが多い。一方で、体がスリムで足が速い打者は、パワー不足の場合が多い。これを、どちらも兼ね備えた打者でなければ達成は不可能なのだ。
しかし、そんな快挙を3度も達成している選手がいるのだが、いったい誰だかお分かりだろうか。正解は、通算762本塁打のメジャー最多記録を持つバリー・ボンズ。その3度は以下の通り。
【バリー・ボンズとトリプルスリー】
・1990年 率.301 本33 盗52
・1992年 率.311 本34 盗39
・1996年 率.308 本42 盗40
※ちなみに...
・1993年 率.336 本46 盗29
・1994年 率.312 本37 盗29
ボンズと言うと本塁打のイメージであり、体も大きめないわゆる“パワーヒッター”という印象が強いが、実は走れるパワーヒッターとして存在感を発揮していた。
しかも、93年と94年は盗塁があと1つ足らないだけでトリプルスリーを逃しており、90年代前半は毎年のようにチャンスがあったのだ。
有名な本塁打記録だけでなく、通算盗塁数も514。史上初の「500-500」達成者としても歴史に名を刻んでいる。
打率を残しながら本塁打も打てるし、盗塁もできる。まさに最高の打者だろう。
そういえば、イチローの天才ぶりを評する時に「ヒットを捨てれば、30本塁打は打てる」という声がよく挙がった。もしそうなると、30盗塁は十分に可能だし、イチローはトリプルスリーに最も近い存在であったかもしれない。
これから先、「トリプルスリー」を達成する選手はどれだけ現れるのか。日米あわせて注目していきたい。