プロ初本塁打を放った北條
規定打席数に達しないながらも4割近い打率を残す江越大賀や、14日まで10試合連続安打を放ったルーキー高山など、若手野手の活躍が目立つ阪神のなかで、打率や安打数といったものとはまた別の数字と戦うことになりそうな選手がいる。高卒4年目の北條史也だ。
4月3日の横浜戦ではプロ初安打を本塁打で飾り、さらに10日広島戦で一軍初スタメン出場を果たすなど、2013年入団以来、一軍出場が、昨シーズンの代打での1試合だったことを考えると、かなりの期待を抱かせるシーズンスタートと言えるかもしれない。
光星学院高校時代は、高校通算25本塁打を放ち、主砲としてチームの甲子園3大会連続準優勝や神宮大会優勝などに貢献する活躍をみせた。プロ初安打がホームランなのも納得の実績で、長打力も期待されている。
長年ショートでレギュラーを務める鳥谷
10日は体調不良のヘイグに代わっての三塁でのスタメン出場だったが、本職は学生時代から守るショートだ。阪神のショートといえば、連続試合出場記録を更新中の鳥谷敬がいる。
昨シーズン終了時点で歴代3位となる1609試合連続出場を果たし、今シーズンもここまで順調に記録を更新中だ。歴代1位は言わずと知れた元祖「鉄人」衣笠祥雄の2215試合、2位は阪神金本監督の1766試合だ。今シーズン全試合を果たしてもこの2人にはまだ追いつかない計算となるが、大きなケガがなければ順調に記録を伸ばすことが可能だろう。
問題なのは、鳥谷が更新中のもう一つの記録である、「連続フルイニング出場記録」だ。
代打でも守備でも出場さえすれば伸ばすことのできる連続試合出場記録とはちがい、途中交代の許されないフルイニング出場は、まさに「鉄人」の記録といえるだろう。鳥谷は、2012年3月30日からフルイニング出場を続け、昨シーズン終了までで歴代4位の575試合となり、連続試合出場と同様に2016シーズンもここまで途切れずにきている。こちらの歴代記録はというと、3位衣笠祥雄678試合、2位三宅秀史700試合、そして、世界記録となる1492試合の大記録を持つのが再び登場の金本監督である。
このような連続記録は、選手本人だけでなく監督やチーム全体を巻き込む問題となる可能性がもつ。金本監督が現役時代に骨折したまま出場し、片手でヒットを打った場面を記憶している方も多いと思うが、この時も賛否両論様々な意見が飛び交った。
記録へのこだわりが選手やチームにプラスに働く場合もあるが、後継者育成の妨げになるという意見もあり、偉大な記録達成を祝うのと同じくらい批判の声があがったのも事実だ。現役時代にそんな状況を身をもって体験した金本が現在監督をつとめているというのも因縁めいたものを感じる。
今シーズンの開幕前、鳥谷について、「記録を優先させたい」と語っていた金本監督だが、打撃好調の阪神の中で、開幕から状態が上がらない鳥谷を今後どうするのかという問題が持ち上がるのも時間の問題だろう。
前述のとおり、北條は内野の他のポジションも守れるが、シーズン前の熾烈なポジション争いに勝ちセカンドレギュラーをつかんだ西岡はここまで打撃好調と付け入るスキがなく、さらに三塁ヘイグが戻ったことで北條は再び代打稼業に戻った。
昨シーズン、前年に鳥谷がメジャー挑戦を表明していたこともあり、北條は春から一軍に帯同し、鳥谷の残留が決まってからも後継者として期待された。しかし、結局一軍では代打での1試合出場に終わるという悔しさを味わい今シーズンを迎えている。
このまま順調にいくと鳥谷のフルイニング出場が衣笠や三宅の記録に迫るシーズン中盤や終盤になると、問題はさらに複雑さを増すだろう。自分ではどうにもならない数字との戦いに勝ち、「鳥谷越え」を狙うためには、ここから数か月が北條にとって勝負の時期になりそうだ。