「日大三高世代」、即戦力が多い大卒組
松坂大輔、和田毅、藤川球児を代表とする『松坂世代』、田中将大、坂本勇人、前田健太を代表とする『マー君世代』。プロ野球界には、逸材ぞろいの世代を、代表する選手の名前を取り、このように呼ぶことが一般的である。
今年もプロ野球が開幕し、1ヶ月が経とうとしているが、オフシーズン、開幕前から球界に暗いニュースが続いたこともあり、球界全体が、『再建』を一つのキーワードとしている印象を受ける。
なかでも金本新監督率いる阪神タイガースは、「超変革」をスローガンに掲げ、開幕より躍進を遂げている。まさにその象徴となる存在が、ドラフト1位ルーキー高山俊であることは間違いない。オープン戦から、自らのバットで結果を残し続け、誰もが納得する開幕一軍を掴んだ。開幕後も21試合に先発出場し、打率.283、1本塁打、9打点。26安打はチームトップ、無安打に終わったのは5試合のみ。早くも金本阪神の顔になりつつある。
そして、高山と同じく今年ドラフト1位で入団したオリックスの吉田正尚、ドラフト3位で入団した楽天の茂木栄五郎も、開幕スタメンを掴んで以降、毎試合オーダーに名を連ねている。日本ハムをドラフト6位入団で、開幕一軍を果たした横尾俊建は、4月7日に二軍落ちしたものの、二軍の試合では4番を任されるなど、依然首脳陣の期待と評価の高さを伺わせる。
この高山、吉田、茂木、横尾を始めとする大学野球を経ての「大学組」のバッターたち。彼ら活躍は、同じ1993年生まれの学年ではあるが、高校から直接プロの世界に飛び込んだ「高校組」の選手達に刺激を与えているように感じられる。
高卒組には高橋、武田、近藤…
11年ドラフト1位入団の中日ドラゴンズの高橋周平が、刺激を受けている最たる一人ではないであろうか。既に「高校組」のうち、武田翔太(ソフトバンク)、近藤健介(日本ハム)は、チームの柱として活躍している。
そんな中、高橋は高校通算本塁打71本の記録を引っさげ、即戦力野手として入団したものの、ルーキーイヤーの12年より、4年間出場機会を得るも、いずれも規定打席に大幅に届かない数字。打率も2014年の61試合出場で、打率.257が最高。期待に応えきれていない状況であった。
しかし、今年は開幕からスタメン出場を続け、20試合終了時点で打率.312(チーム2位)、2本塁打(チーム2位)、10打点(チーム2位)と、まさにチームを牽引する活躍ぶりである。
もう一人、DeNAの桑原将志も11年のドラフト4位で指名された期待の内野手。桑原も15年は開幕スタメンを掴むなど、ルーキーイヤーから4年間全てのシーズンで出場機会を得てはいるものの、レギュラーを掴むまでの活躍には至らずにいた。しかし、今年はここまで全21試合のうち15試合の出場で規定打席に届いてはいないが、打率.378、出塁率.417の活躍を見せ、レギュラー奪取の予感を漂わせて始めている。
松坂大輔や田中将大のように、甲子園で注目を独占した絶対的な存在は出ていないが、日大三高が圧倒的な強さで夏の甲子園を制覇したことから、この世代を『日大三高世代』と呼ぶのであれば、高山俊、横尾俊建などの大学組、高橋周平や桑原将志の他にも歳内宏明(阪神)、釜田佳直(楽天)などの高校組と分類され、この『日大三高世代』には各チームが次世代のチームの顔になることを期待する逸材が多く揃っている。
まだ23才。大学組の活躍により、この世代のくすぶっていた高校組の選手達が、動き出す。球界全体に旋風を巻き起こすことを期待したい。