ニュース 2016.05.04. 17:45

「野球で恩返しがしたい」…広島・小野淳平の“勝負の5月”

ひとことで言うと、“めちゃくちゃいい奴”


 今オフ、巨人の内海哲也が行った沖縄自主トレ。参加メンバーを見渡してみると山口鉄也や、宮国椋丞ら巨人の投手陣が集まった中、“小野”という名前があった。小野淳平。広島の投手である。

 小野は2009年のドラフト5位で巨人に入団。大分商から日本文理大へと進み、150キロのストレートを武器にプロ入りした。

 2011年に一軍デビューを果たすと、14試合の登板で2勝をマーク。先発としての経験も積み、その後の活躍が期待されたが、巨大戦力の中に割って入っていくことはできず。結局2013年に青木高広とのトレードで広島へと移籍した。

 一言で言えば、“めちゃくちゃいい奴”。人を虜にするような性格で誰からも愛され、先輩選手からも一目置かれている。子供にも、お年寄りに対しても優しく接するその姿は、プロ野球選手の模範とも言えるほどの人柄だ。

 移籍した今なお自主トレに誘う内海も、きっと小野を放っておけなかったのだろう。巨人に同期入団した長野も、何かあるたびに小野の事を心配し、連絡をしてくるという。広島とのトレードが実現した際に、「淳平はジャイアンツの投手陣の精神的支柱でしたから、本当に寂しいです」と語るチームメイトがいたのも印象的だ。


「野球で恩返しがしたい」


 そんな小野が居ても立ってもいられなくなったのが、先月起きた「熊本地震」である。

 報道では伝えられていないが、隣県・大分出身の小野は、普段お世話になっている九州の知り合いに1本の電話を入れた。「チームメートと一緒に、トラック3台分の物資を熊本に送りました。周りでお困りの方がいたら使ってください」。

 こんな気配り、そして優しさを持つプロ野球選手。だが、肝心の野球では苦しんでいる。

 広島に移籍後、昨年は一軍登板無し。それでも今季は春季キャンプを一軍で迎え、開幕一軍の投手11名の中にも名を連ねた。

 先発に中継ぎ、そしてロングリリーフと、様々な役回りを務められる男は広島投手陣の支えとなると思われたが、3月31日の中日戦で1回を2安打、2失点と結果を残せず。開幕から程なくして二軍降格を言い渡される。

 それでも、小野は再び這い上がった。4月29日に一軍へと戻り、登板の機会を伺っている。

 「熊本の事もありますし、他球団や僕の周りの方が本当に気にかけてくれている。僕には野球しかないので、色々な意味で野球で恩返ししたいと思います」。

 もう同じ失敗は繰り返せない。小野にとっての“勝負の5月”がはじまった。
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