偉業に王手をかけた新井貴浩
広島の新井貴浩が、“打者の勲章”である2000本安打に王手をかけた。
ここまで積み重ねたヒットは1999本。あと1本で名球会入りを果たす。広島工高から駒沢大を経て、広島に入団。その後は阪神へと移り、そして昨季からふたたび広島の一員となった。
2005年には43本塁打を放って本塁打王のタイトルも取ったが、2008年に阪神に移籍して以降は一度も20本塁打を超えることなく、どちらかといえば中距離タイプのバッターへと変貌。そして今季、プロ18年目で金字塔を打ち立てようとしている。
新井といえば、クリーンナップを任されることが多かった。阪神移籍前の広島時代には4番を張り、阪神でも5番がメイン。今季は6番を務めていたが、エクトル・ルナの故障で離脱すると4番へ。今なお打線の中核を担い続けている。
そういう意味では、「2000本安打」という記録は通過点に過ぎないのかもしれない。39歳、まだまだやれる。2000から2100、そして2500へと、安打を積み上げていってほしい。
次なる候補は、意外な“守備の人”!?
いよいよ秒読み段階に入った新井の偉業達成であるが、では新井が達成した後、次に2000本安打を達成しそうな選手というと誰なのか。そこで名前が浮かんでくるのが、中日の荒木雅博である。
荒木は今季ここまでで17試合に出場。15本の安打を放ち、通算2000安打まで残り95本としている。ちなみに阪神の福留孝介が残り45本でリードしているようにも見えるが、彼の場合は日米通算の数字。日本プロ野球単独での記録となると、新井に続くのは荒木が最有力となりそうだ。
荒木といえば、言わずと知れた守備の名手。プロ入り当初の荒木を見て、2000本安打を達成するような選手になると思った人はほとんどいなかっただろう。
1996年、熊本工高から中日に入団。1年目は一軍出場なしに終わり、2年目の1997年から2000年までは、守備固め及び代走要員としての起用が主だった。つまり、打撃はまったく期待されていなかったのだ。
事実、プロ入りから5年目までの通算安打数はというと、なんとわずかに15本。出場試合数も5年間で126試合と、まったく振わなかったのだ。
それが、2001年になると突然の打撃開眼。6月ごろから1番打者として固定されると、いきなり.338というハイアベレージを叩き出した。規定打席には到達しなかったが、一躍期待の星となった。
打撃タイトルはないものの、コツコツ積み上げてきた39歳
打撃が開花すれば、守備はもともとうまい選手。2002年以降は中日の看板選手へと成長する。
井端弘和と組んだ鉄壁の二遊間コンビは“アライバコンビ”と呼ばれ、一世を風靡。2004年から6年連続で、二遊間のゴールデングラブ賞を独占した。
当時の落合監督は、荒木の守備について「二塁手としてはメジャーでも通用する。間違いなく日本一の選手」と褒めちぎっている。遊撃手にコンバートされても、守備のうまさは天下一品だった。
開眼した打撃では、2005年に181安打を記録。最多安打は逃したが、自己最多の安打数を達成した。さらに足も速く、2007年には31盗塁で盗塁王のタイトルを獲得。球界を代表する二塁手になった。
昨年までに積み上げた安打は1890本。迎えた今季は、開幕から主に2番を任され、55打数の15安打、打率.273という数字を残す。4月25日現在で、通算安打数は1905本……。このままのペースでいけば、8月か9月には達成できそうなペースで来ているのだ。
2000本安打を達成した“守備の人”といえば、宮本慎也が記憶に新しい。2013年までヤクルトでプレーし、すでに現役を引退した名手は、2012年5月4日の広島戦で2000本安打を成し遂げた。41歳と5カ月での達成は、「最年長記録」として話題になった。
コツコツ安打も積み上げてきた“守備職人”が目指す大記録。新井貴浩の次は、荒木雅博の挑戦に注目だ。