“不安要素”のはずだった内野陣
シーズン開幕直後のこと。ロッテは一塁・井上晴哉、二塁・中村奨吾、三塁・細谷圭、遊撃・鈴木大地という“全員20代”の内野陣で戦いに臨んでいた。
オフに今江敏晃にルイス・クルーズといった内野のレギュラー選手が他球団へ移籍。そこに新外国人のヤマイコ・ナバーロが実弾所持で出場停止というアクシデントも重なり、「そうせざるを得なかった」と言う方が正しいかもしれない。
ところが、開幕前からの心配は杞憂に終わる。細谷を筆頭に各選手が台頭し、ネガティブな開幕前の雰囲気を一掃。ピンチはチャンスへと変わっていった。
そして開幕から1カ月が経過すると、そこにナバーロが合流。二塁でスタメン出場するようになると、開幕から二塁で出場していた中村は三塁に入り、一塁のポジションは調子を落とした井上に代わりベテラン・井口資仁が起用されるようになる。
そんな中迎えた4月26日の西武戦。「9番・一塁」でスタメンに名を連ねたのが、根元俊一だった。
波乱万丈なプロ野球人生
根元は2005年の大学・社会人ドラフトでロッテから3位指名を受けて入団。プロ3年目の08年には二塁のレギュラーに定着し、主に2番打者として110試合に出場。規定打席には未到達ながらも、打率.296と結果を残した。
しかし、その翌年から根元の茨の道がはじまる。
2009年、メジャーでプレーしていた井口資仁が電撃加入。二塁のポジションに井口が入ったため、レギュラーを奪われた根元は出場機会が減少。代打中心の出場に甘んじた。
それでも、2011年には開幕から遊撃に入っていた荻野貴司がケガのためシーズン途中で離脱すると、根元が代役として活躍。翌年には開幕から遊撃のレギュラーを獲得し、自己最多の133試合に出場。リーグトップタイの40犠打を記録するなど、飛躍の年となった。
2013年には背番号も「2」に変わり、1番打者として活躍。シーズン途中には主戦場の二塁へと戻るなど、その年も123試合に出場した。
今度こそレギュラー定着かと思った2014年、また根元の前に高い壁が現れる。
二塁を主戦とする助っ人ルイス・クルーズが加入すると、前年台頭した鈴木大地との競走にも敗れ、出場機会が激減。一軍生き残りのため、一塁の守備に挑戦したのもこの年からだった。
そして昨年、一軍での出場といえば一塁での出場がメインに。プロ入り当初からは考えられないような起用法に変わっていた。
何度踏まれても這い上がってきた男
2016年、迎えた11年目のシーズン。チームの内野陣は大きなピンチを迎えていたが、根元は開幕を二軍で迎えた。
それでも、4月26日に一軍昇格を果たすと、同日の西武戦でスタメン出場。初打席でライトへの安打を放ち、1カ月遅れの開幕を迎えた。
30日の日本ハム戦では先制の2点適時二塁打と犠飛で計3打点の活躍。今季初めてお立ち台に上がると、5月1日の試合では大谷翔平から2点適時三塁打をマーク。5日の楽天戦では、ミコライオから今シーズン初アーチも放った。
どんな苦境に陥っても必ず這い上がってきた男は、今年も少ないチャンスでしっかりと爪痕を残している。何度倒れても立ち上がる…。好調なチームの中で根元俊一が見せる“生き様”に是非とも注目していただきたい。