巨人のスピードスター候補は今...
シーズン開幕前、暗い話題が多かった巨人に明るい話題を振りまいたのが、ドラフト2位ルーキーの重信慎之介だった。
早稲田実業から早稲田大を経て、ドラフト2位で巨人入り。持ち味はなんといってもそのスピードで。キャンプからオープン戦にかけてはその武器を存分に発揮し、高橋由伸新監督を喜ばせたが、徐々に主戦級の投手が増えてくるオープン戦終盤に差し掛かると成績は低迷の一途を辿った。
結局、一軍では1試合の出場で1打数無安打。開幕直後に二軍に降格すると、30試合の出場でリーグトップの12盗塁をマークするなど、そのスピードでは存在感を見せているが、打率.258と打撃の方では壁にぶち当たっている。
重信は青木になれる?
大学時代は俊足巧打のリードオフマンとして、打撃の方にも定評があった重信。通算安打は80を数え、打率も.333と好成績を残している。
そんな重信を、ある“偉大な先輩”と比較する声も当時は挙がっていた。2004年、早稲田大からプロの世界へと飛び込み、今や世界で活躍する安打製造機・青木宣親である。
日向高から早稲田大を経て、2003年のドラフト4位でヤクルトに入団。重信が苦しんだように、青木もルーキーイヤーは一軍出場わずか10試合で15打数3安打、打率.200とプロの壁にぶち当たった。
しかし、青木がすごかったのは、二軍では.372という高打率をマークして首位打者を獲得。フレッシュオールスターでもMVPを獲得するなど、ファームではルーキーイヤーから輝きを放っていた。
その後の男の成長は、皆様ご存知の通り。首位打者に輝くこと3回、最多安打は2回、最高出塁率も2回。日本球界で唯一、2度の200安打を記録した。
重信がこの青木と並べて期待を寄せられるのには理由がある。2人の大学時代の通算成績は、以下の通り。
【青木と重信の大学通算成績】
・青木宣親(早大→ヤクルト)
58試 打率.332(190-63) 本0
・重信慎之介(早大→巨人)
83試 打率.333(240-80) 本2
ご覧のように、2人ともとても似た成績が残っているのだ。
日本を代表する「安打製造機」へ!
青木がいた当時の早稲田大といえば、1番には田中浩康(現ヤクルト)がおり、2番に青木、3番・鳥谷敬(現阪神)、4番・比嘉寿光(元広島)、5番・武内晋一(現ヤクルト)、6番・由田慎太郎(元オリックス)という強力打線。この時は同校史上初の4連覇も達成し、この6人は後に全員プロ入り。まさに黄金時代であった。
一方、重信が在籍していた当時の早稲田大はというと、2連覇が最高。もちろん立派な成績ではあるのだが、同期でプロ入りを果たしたのは茂木栄五郎(現楽天)のみ。青木の頃と比べてしまうと、そこまでの強さはなかったと言える。
大学時代の2人を見ても分かる通り、打率はほぼ同じ。重信は1年の時こそレギュラーではなかったが、2年春からレギュラーを張ると、コンスタントに安打を量産。4年の秋、大学ラストのシーズンでは打率.432(37-16)という驚異的な数字を残し、首位打者に輝いた。
つい昨年見せていた打撃センスはスカウトたちを唸らせた。青木と同等、あるいはそれ以上との呼び声も高い。一方で、重信本人も「目標は青木さんです」と明言するなど、大学の偉大な先輩を意識しているのだ。
今は壁にぶち当たっている重信だが、いつかは日本を代表する安打製造機へと成長できるほどのポテンシャルは秘めている。
目標とする先輩への挑戦…。重信慎之介のキャリアは、まだ始まったばかりだ。