ニュース 2016.05.25. 10:00

優勝への「勝利の方程式」 縁の下の力持ち「セットアッパー」の重要性

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現在は抑えに配置転換も、春先はセットアッパーとして活躍した中日の田島慎二

投手分業の時代、セットアッパーの出来がカギを握る


 プロ野球の世界だけでなく、昨今は高校野球でも取り入れられている投手の「分業制」。主に、初回から5、6回までを登板するのが「先発」。後を受け、7、8回に「セットアッパー」が登板し、勝ちゲームの最後を「ストッパー」が締めくくる。

 シーズン終盤まで優勝争いをするチームは、非常に高い確率でこの分業制が確立しており、主に7回以降にセットアッパーからクローザーへとつなぐ投手リレーは「勝利の方程式」と呼ばれ、ファンの間でも記憶に残るものになる。

 そもそもこの投手リレーを「勝利の方程式」と命名したのは、当時読売ジャイアンツの長嶋茂雄監督で、1993年、1994年にセットアッパー・橋本清からクローザー・石毛博史へとつなぐ必勝継投を「勝利の方程式」と呼びはじめてから広まった。

 2015年終了時点でのシーズン登板数の歴代順位を見てみると、歴代1位は久保田智之(阪神)の90登板、2位は藤川球児(阪神)の80登板。さらに見ていくと、75登板の10位に稲尾和久(西鉄)、ウィリアムス(阪神)、武田久(日本ハム)、アッチソン(阪神)、まで同数記録含め計12名の記録が並ぶ。

 稲尾和久以外すべての投手が、セットアッパーとして送ったシーズンの記録だ。規定投球回数の関係から、勝利数や防御率の個人タイトルも難しく、また試合を締めくくるストッパーに与えられる「セーブ」も記録されない。

 セットアッパーに対する勝利の貢献度を示す記録が、「ホールド」である。このホールドは、1986年に、クローザー以外のリリーフ投手のチームに対する勝利への貢献度を示す指標としてアメリカで考案され、日本では1996年にパ・リーグが一足先に採用し、2005年に新規定を定めた上で、両リーグで現行の制度が採用された。


ホールド数が優勝に繋がる可能性が高い


 ホールド数は、チームの勝敗に大きく関わる場合が多い。

 2014年、2015年とパ・リーグを制覇し、日本一連覇中のソフトバンクは、2014年のチームホールド数が「130」、2015年のチームホールド数が「106」で、共にリーグトップの成績。

 そして、2014年にセ・リーグで順位が最下位だったヤクルトのこの年のチームホールド数は「66」。ダントツのリーグ最下位であったが、翌年2015年はその数をリーグトップの「105」と飛躍的に伸ばし、リーグ制覇を果たしている。

 5月24日現在、パ・リーグ首位のソフトバンクのホールド数は、「35」でリーグトップ。一方、セ・リーグトップはリーグ3位・中日の「37」だ。

 チームホールド数トップ中日は、救援防御率でもリーグトップの2.84を記録する。その中でも、前カードの巨人戦から抑えに配置転換した田島慎二の存在が大きい。田島といえば、開幕から続く連続無失点記録の日本記録を更新し、中日の勝ちパターンには欠かせない存在感を発揮している。

 中継ぎ陣がホールドを重ねれば、必然的に「優勝」の二文字は近づいてくる。2015年にリーグ制覇を果たしたヤクルトは、2014年から2015年にかけた中継ぎ陣の成長が優勝をたぐり寄せた要因の一つになっていた。いかにリードした試合を勝ち切り、ビハインドを負った試合を接戦に持っていくことができるのか。中継ぎ陣の好成績は、イコールで勝利へと繋がり、優勝への方程式となる。
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