6番・投手で3安打猛打賞の大活躍
交流戦前の最後のカードとなった5月29日の楽天-日本ハム戦で、衝撃のオーダーが発表された。パ・リーグ主催試合では指名打者制を採用しているが、日本ハムの栗山英樹監督は、指名打者を解除し、大谷翔平を「6番・投手」で起用した。
これまで封印されていた登板日での打者起用。プロ入り後、投手で先発し打席に立った試合は5度ある。だがそれは、いずれもセ・リーグのチームと対戦する交流戦でのことだった。
今シーズン、投手としては9試合に登板し、3勝4敗、防御率2.84。そして、打者としては打率.365の高打率をマークし、本塁打の数は中田翔と同じ9本を記録している。チーム内では、17本塁打を放っているレアードに次ぐ数字だ。打撃面でも、チームの核として機能している。
パ・リーグのチームに初めて「リアル二刀流」を見せたこの試合でも、大谷は躍動。打っては5打数3安打の猛打賞。投げては、大量援護にも恵まれ、7回を4安打、1失点に抑え今季3勝目を挙げた。
大谷の成長を見守る指揮官の決断
5月11日の日本ハム-オリックス戦(東京ドーム)で大谷は、オリックスの先発・東明大貴が投じたやや甘く入った初球のストレートを見逃さず、逆方向に運ぶ技ありの一発を放った。
しかし試合後、記者陣に囲まれた栗山監督は、大谷について厳しい見方を崩していなかった。
「彼の飛距離を考えれば、逆方向に放り込めるパワーはある。(大谷に)こんなところで満足しているところじゃない、と言いたい」。
東京ドームだからスタンドインしたと分析し、さらなる高みを目指すべく、あえて厳しい言葉を送ったようにも見えた。
さらに記者陣から、「そろそろ登板日でも打者として起用しては?」と水を向けられても、栗山監督は「先発投手として機能していないなら、打席には立たせない。チームの迷惑になる」と、そのアイデアを否定した。しかし、その後にこうも付け加えていた。
「(ホームラン)10試合連発なら考える」。
5月11日のオリックス戦後、「出られる試合でやるべきことをしっかりやるだけ。1本のヒットを打つ難しさはわかっている。自分自身が良いと思う打席を増やせればいい。それがチームの勝利につながればという気持ちです」と語った大谷は、その後も好調を維持し続ける。
その結果、10試合連発は達成できなかったものの、投打にわたる活躍により、栗山監督に「リアル二刀流」での起用を決断させた。
やはり、大谷はスケールが違う。5月31日から始まった「日本生命セ・パ交流戦」では、同日のヤクルト戦で早速本塁打を放ち、6月1日の試合でもフェンス直撃の二塁打で自身の連続試合安打を13に伸ばした。
そして次の登板は、東京ドームで行われる6月5日(日)の巨人戦となる見込み。セ・リーグの主催試合ということで、再び投手として打席に立ちつことになる。進化し続ける大谷の今後から、この先も目が離せそうにない。