セ・リーグを盛り上げる2人の右腕
各チームが70試合前後を消化し、いよいよシーズンの折り返し地点が近づいてきているプロ野球界。
今年も混戦模様となっているセントラル・リーグの前半戦で目立ったのが、ある2人の投手の活躍だった。
まずはセ・リーグの投手成績で、いわゆる“投手四冠”と呼ばれる主要4部門を見てみよう。
【セ・投手主要4部門】
<防御率>
1位 0.88 菅野智之(巨人)
2位 2.10 ジョンソン(広島)
3位 2.41 野村祐輔(広島)
<勝利数>
1位 8勝 野村祐輔(広島)
2位 7勝 ジョンソン(広島)
3位 6勝 マシソン(巨人)
3位 6勝 メッセンジャー(阪神)
5位 5勝 菅野智之(巨人) ※ほか6名
<勝率>
1位 .800 野村祐輔(広島)
2位 .625 菅野智之(巨人) ※ほか3名
<奪三振>
1位 95個 菅野智之(巨人)
2位 88個 メッセンジャー(阪神)
3位 83個 岩貞祐太(阪神)
冒頭で述べた“目立った2人”とは誰のことか。もうお分かりだろう。各部門で上位に名を連ねる1989年生まれの右腕、巨人・菅野智之と広島・野村祐輔である。
5年前の目玉「大学BIG3」
「ドラフトの目玉」――。
1位指名確実、競合は必至、スカウト○人が集結などなど...。こういったワードと共に取り上げられる注目選手の存在が、毎年行われるドラフト会議を盛り上げる。
いまから5年前の2011年。菅野と野村は紛れもなく「ドラフトの目玉」であった。当時は2人に加えて東洋大・藤岡貴裕(現ロッテ)が高い評価を受けており、その3人は「大学BIG3」の異名でプロから熱視線を浴びていた。
結果的には、野村が広島から単独指名を受け、藤岡は3球団競合の末にロッテへ。そして巨人と相思相愛と見られていた菅野の交渉権は日本ハムが獲得。しかし、菅野は自身の意志を貫き、入団拒否を決断。1年間の浪人生活を送ることになる。
同じように注目を浴びながら、それぞれ違ったはじまりになったプロでのキャリア。あの時のドラフト会議から早4年…。彼らはチーム内で自らの地位を築き上げた。
菅野と野村、2人の“ライバル関係”に注目!
1年の浪人生活を経た菅野は、翌年のドラフトで念願の巨人入り。そのため、2人よりは1年プロとしてのキャリアは短いものの、入団から3年連続で2ケタ勝利を挙げるなど、今では球界を代表する投手として君臨している。
前半戦は味方の援護に恵まれず、勝ち星は5つに留まっているものの、その投球内容は圧巻の一言。防御率は12球団で見てもダントツの0.88を記録し、奪三振95もリーグトップ。驚異的な成績を残している。
一方の野村は、1年目から先発ローテーションの一角として活躍すると、9勝(11敗)に防御率1.98という成績が評価され、新人王を獲得。“ドラフトの目玉”として恥じないはたらきを見せる。
2年目には12勝6敗で初の2ケタ勝利を挙げるなど、球界を背負う投手へステップアップしていくことを誰も疑わなかったが、3年目に入ると成績が急降下。7勝8敗で防御率4.39と苦しむと、4年目には5勝8敗、防御率は4.64とさらに悪化。スランプに陥ってしまう。
しかし、5年目の今シーズンは好調なチームの勢いに乗ってスランプから脱出。ここまでハーラー単独トップの8勝をマークし、防御率でも3位につけるなど、奪三振以外の3部門で上位に入る逆襲を見せているのだ。
大きな期待を受けた選手ほど、プロ入り後に苦しい戦いを強いられるというのはよくあること。しかし、菅野も野村も苦しい時期を乗り越え、5年目にしてリーグを席巻するような活躍を見せている。
「大学BIG3」と括られた者同士、同世代の“ライバル”には負けられない――。菅野と野村、2人の“ライバル関係”が、後半戦のセ・リーグをさらに盛り上げてくれることだろう。