積極性と確実性が増した今季の坂本
昨季、セ・リーグワーストのチーム打率.243に終わった巨人。規定打席に達したのは坂本勇人と長野久義のふたりだけで、チーム最高打率だった坂本でも打率.269でリーグ16位だった。
2年連続で3割打者がいなかったのは、2リーグ制後では球団史上初のこと。シーズン20本塁打にひとりも到達しなかったのは、1960年以来で55年ぶりと“歴史的貧打”に泣かされた。
今季ここまでのチーム打率は中日と並ぶリーグ3位タイ。それでも.246と課題が解消されたとは言えない。リーグワーストのチーム打率.243の阪神に逆転される可能性すらある。
遊撃手で首位打者獲得はセ・リーグ初の快挙
そのなかで光る活躍を見せているのが、リーグトップの打率.332を記録している坂本だ。
14本塁打、43打点はともにチーム最多。坂本のシーズン2ケタ本塁打は2009年から8年連続8度目だが、巨人の遊撃手で8度目の2ケタ本塁打というと広岡達朗、二岡智宏の7度を抜いて最多になる。
また、チーム50試合目での2ケタ本塁打到達は、自己最多の31本塁打を記録した2010年の40試合目に次ぐスピードだ。
2リーグ制以降、首位打者に輝いた遊撃手といえば1956年の豊田泰光(西鉄)と2010年の西岡剛(ロッテ)のふたりだけ。今季、坂本が首位打者となればセ・リーグでは史上初の快挙となる。
2012年に打率.311を記録したものの、最近3年は2割台と苦しんだ坂本。不振に喘いだ男が打率を伸ばしている要因は、「積極性」にある。
昨季の坂本は、初球時の成績が54打数14安打で打率.259。規定打席に達した選手のなかでは下から4番目という低打率だった。それが今季は、初球時の成績が40打数20安打で打率5割。昨季より初球時に打ちにいく打数が増え、打率も上げている。
積極的に、なおかつ確実にボールを捉えていれば、通算打率が上がるのもうなずける。
四球を選べて三振が少ない今季の坂本
初球時を含めたファースト・ストライク時の打率も.433と高く、14本塁打中9本がファースト・ストライクを打ったもの。また、フルカウント時は打率こそ.222と低いが、9三振・24四球としっかりボールを見極めている。
シーズン通算でも29三振・37四球となっており、キャリアのなかで初めて三振よりも四球が多くなっている。
坂本以外の攻撃陣に目を向けると、昨季不振だった長野久義が打率.296を残し、村田修一も打率3割を記録している。ただし、この3人以外の成績があまりにも悪すぎる。坂本、長野、村田の打率は.309だが、それ以外の野手の打率は.222まで落ちてしまうのだ。
リーグワーストの打率.197の小林誠司は、正捕手として経験を積んでいる段階。そのため、打撃まではなかなか頭が回らないのかもしれないが、首位を走る広島を追うためには野手陣の奮起が不可欠だ。交流戦から復帰し、18試合で打率.277、3本塁打を記録している阿部慎之助がどっしり構えるようになると、もう少し打線の巡りもよくなるだろう。
遊撃手として、ある意味では“歴史的”な打撃を見せている坂本がどれだけ巨人打線をけん引できるか…。リーグ戦再開後も、坂本のバットにかかる期待は大きい。
文=京都純典(みやこ・すみのり)