打線は勝負強さを発揮
広島の勢いが止まらない。29日のヤクルト戦、黒田博樹が投打にわたる活躍で勝利し、連勝を11に伸ばした。貯金は今季最多の16、2位・巨人とのゲーム差も9と首位を独走する。昨季はリーグ優勝候補に挙げられながら4位に終わった。そして今季は、エースだった前田健太がメジャーに挑戦し、前評判はそこまで高くなかった中で首位を快走する。昨季と比べて、どこが変化したのか見ていきたい。
打線は昨季、リーグ3位の506得点を挙げるも、得点圏打率はリーグワーストの.235。勝負所で1本が出ず、敗れた試合が多かった。加えて、2014年に打率3割を越えた菊池涼介と丸佳浩の“キクマル”コンビが揃って打撃不振。本塁打王に輝いたエルドレッドも、故障と不振で1年間1軍でプレーできず、攻撃陣の“軸”となる選手が揃って精彩を欠いていた。
昨季と比べて今季は、開幕からチャンスに強い印象だ。ここまで、リーグトップの357得点を記録し、昨季リーグワーストだった得点圏打率も、リーグ3位の.267をマークする。選手別の得点圏打率を見ると、6月24日の阪神戦から28日のヤクルト戦にかけて4試合連続打点を記録した新井貴浩がリーグトップの.364をマークし、29日のヤクルト戦で逆転のタイムリー二塁打を放った菊池涼介がリーグ3位の.362を記録。さらに、2試合連続サヨナラ本塁打を放つなど日に日に存在感が増している鈴木誠也もリーグ8位の.310をマークする。
得点圏打率は.282だが、3番を打つ丸佳浩はリーグ3位の50打点を記録し、現在故障で離脱中のエルドレッドも38打点を挙げている。さらに、規定打席に到達していないが、4番・ルナも得点圏打率.364を記録するなど、勝負強い選手が多い。
また、選手層が厚くなったのも、昨年との違いの1つだろう。ルナが故障中に三塁のポジョションに入った安部友裕がルナの不在を感じさせない働きを見せれば、エルドレッドが離脱している現在は、松山竜平、下水流昂が打撃で存在感を見せている。特に4年目の下水流は、19日のオリックス戦で2点を追う6回に同点弾を放ち、25日の阪神戦で猛打賞を記録するなど、良い働きを見せている。
マエケンの穴を埋めた野村祐輔
投手陣は昨季15勝を挙げた前田が抜け、先発に再転向した大瀬良大地が開幕前に離脱と、計算できる投手がジョンソン、黒田、福井優也の3人しかいない状況だった。
さらに開幕してからは、福井の不振で台所事情が苦しくなるものの、このピンチを野村祐輔が救う。2年目に12勝を挙げたが、ここ2年は苦しいシーズンが続いていた。復活を目指す今季は開幕ローテーションに入り、4月5日のヤクルト戦で今季初勝利を挙げると、そこから自身4連勝。その後も安定した投球を披露し、6月は4試合に登板して、4勝、防御率1.44。ジョンソンとともに、カード頭を任されるなど、抜群の存在感を示している。
また、25日の阪神戦でプロ初勝利を挙げたドラフト1位ルーキーの岡田明丈、6年目の中村恭平、ここ3試合先発での登板が続く戸田隆矢などもチャンスを活かし、現在は先発ローテーションの一角を担う。若手先発陣にチャンスが増えたことも、昨季までの変化といえるだろう。
リリーフ陣に目を向けると、昨季は春先に抑えのヒース、セットアッパー・一岡竜司で勝ち星を落とす試合が多く、シーズン中盤から先発を務めていた大瀬良がリリーフに転向。大瀬良が配置転換してからは、救援陣が安定したものの、1年間を通してみると、リリーフ陣の駒不足は明らかだった。
昨季の反省を踏まえ、オフにはリリーフを主戦場にするジャクソンとヘーゲンズを獲得。この2人は守護神・中崎翔太に繋ぐ、セットアッパーを務め、ジャクソンがリーグ2位の18ホールドを記録し、ヘーゲンズは防御率1.73をマーク。チームが勝利するためには、欠かせない存在となっている。
昨季に比べると、前評判は決して高くはない広島だったが、投打ともに安定し、首位を快走する。大きな連敗もなく、ここまで最も長い連敗で「2」。もちろん、そのほかの5球団が星を取り合っているという状況はあるものの、25年ぶりのリーグ優勝に向けて視界は良好と言えるだろう。