熾烈を極める甲子園をかけた戦い
今夏の千葉は、アツい――。
気温もそうだが、今日するのは高校野球の話。強豪校がひしめく千葉県には、甲子園出場の切符が1枚では足りないぐらいだ。
参加は総勢170校。7月9日に開会式が行われ、7月25日の決勝進出を目指して熱戦が繰り広げられている。
千葉県は南北に長い。たとえば東京都に隣接している浦安から、房総半島の一番南に位置する館山までだと、下道を使うと車でも約2時間半から3時間はかかる。気候も文化も違うのだが、それでも一つの県として代表校を決めないといけないのだからその争いも熾烈になる。
プロ注目は2人のエース
昨夏の代表校は専大松戸。決勝では習志野相手に7-3で勝利し、甲子園初出場を勝ち取った。その前、一昨年の県大会を制したのは東海大望洋。こちらも初出場だった。
2年連続で甲子園初出場校が誕生している激戦区の千葉だが、中でも軸となりそうなのは春の8強か。春を制した東海大望洋をはじめ、準優勝の千葉黎明、ベスト4の成田、千葉経大付あたりは有力。さらにベスト8に入った木更津総合、東京学館浦安、松戸国際、千葉明徳までの8校は見逃せない。
中でも今年から「東海大市原望洋」に校名変更された東海大望洋は目玉。春制覇の原動力となったエースの島孝明はプロも注目する逸材である。
本格派右腕の島は、春の県大会で最速154キロを計測。10球団のスカウトが視察に訪れたという。180センチ・80キロの体格から、体全体を使って投げる豪快な投球フォームが魅力だ。
ある在京スカウトは「スピードに関しては、高校ナンバーワンでしょう。154キロ以上の球速を感じたし、徐々に長いイニングを投げられるようになり、スタミナもついてきた。楽しみだ」と、ドラフト上位指名も示唆されている。
プロ注目の投手はもう一人。木更津総合の早川隆久だ。
最速144キロの速球とスライダー、カーブ、チェンジアップを投げ込むサウスポー。1年時の秋の公式戦では、8試合に投げて36回無失点という好投を披露し、チームを甲子園出場に導いている。
今春のセンバツ大会にも出場し、8強進出に大きく貢献する活躍。甲子園で視察したプロのスカウトも「フォームがいい。筋力をつければもっとスピードが出る。元巨人の高橋尚成タイプ」と絶賛。この夏、どこまで球速を伸ばせるか楽しみだ。
強豪・千葉の復活を...
千葉といえば、かつて習志野が夏の甲子園を2度制するなど、全国でも屈指の激戦区として知られている。
その習志野は1962年に初優勝を果たすと、1975年には元ヤクルト監督の小川淳司を擁して2度目の全国制覇を達成。ミスタータイガースと呼ばれた掛布雅之や、中日で活躍した谷沢健一らプロ選手を多く輩出した。
また、1974年は銚子商が全国制覇。エースの土屋正勝が5試合でわずか失点1と快投を見せれば、打線では天才・篠塚和典が「4番・三塁」に座り、圧倒的な強さを見せつけた。
ところが、最近の千葉県はというと、1992年に拓大紅陵、2000年に東海大浦安が決勝まで進んだものの、ともに準優勝。全国制覇はない。
ハイレベルな戦いが予想される今夏の千葉県大会。勝ち抜いた学校には、全国でもその実力をいかんなく発揮して欲しいところだ。