スターダムを駆け上がった2015年
昨シーズンのプロ野球で最も飛躍した男。そう言っても過言ではなかった。
ソフトバンクの柳田悠岐。打率.363でパ・リーグの首位打者に輝き、出塁率.469で最高出塁率のタイトルも獲得。チームを連覇へと導き、リーグMVPにも選出された。
それだけではない。日本では13年ぶりとなる「3割・30本・30盗塁」のトリプルスリーも達成。ヤクルトの山田哲人もこれをクリアしたため、実に65年ぶりとなる1シーズン2人の“同時達成”となり、大きな話題に。『トリプルスリー』というワードは、年末の流行語大賞にも選ばれた。
2年連続トリプルスリーへ崖っぷち
そんな“飛躍の年”から1年――。男は壁にぶつかっている。今季ここまでの成績と昨季の8月終了時点の成績の比較は以下の通り。
<2015年>
113試合 打率.359(423-152) 本塁打27 打点84 四球66 死球11
三振83 盗塁26 出塁率.457 長打率.615 OPS1.072
<2016年>
119試合 打率.305(426-130) 本塁打18 打点73 四球100 死球8
三振96 盗塁22 出塁率.446 長打率.523 OPS.969
ご覧のように、打率は5分以上も落ち、本塁打も9本ショート。今季の苦戦ぶりがお分かりいただけるだろう。
苦しい中でもなんとか打率を3割に乗せ、盗塁も22個成功させているあたりは流石であるが、本塁打はここまで18本。2年連続トリプルスリーの偉業は、限りなく赤に近い黄色信号だと言える。
苦戦の中で輝くひとつの数字
しかし、悲観するばかりではない。今季の成績の中で驚異的なものがひとつある。それが“四球の数”だ。
昨季の主役が苦しんだ不振...。その大きな要因が「相手バッテリーの異常なまでの警戒」だった。
それを象徴するのが、4月に記録された「18試合連続四球」という記録。これはあの王貞治と肩を並べるプロ野球タイ記録である。
なかなか勝負してもらえない中、際どいコースは見極め、チームのために自らを制した。その結果が100個の四球であり、リーグトップの出塁率.446という数字なのだ。
パ・リーグで四球の数が年間100個を越えたのは、2014年のアンドリュー・ジョーンズ(楽天)以来で2年ぶり。日本人では2006年の松中信彦(ソフトバンク)までさかのぼる。
ちなみに、四球のシーズン記録は1974年・王貞治(巨人)の158個。記録更新とはいかないまでも、どこまでその数を伸ばして行けるのか。今年は“四球の数”に注目が集まっている。
個人よりもチームの3連覇
苦しい戦いが続いた柳田であったが、8月終盤に入って息を吹き返しつつある。
8月は月間打率.347に6本塁打で22打点。特に最後の6試合は12安打・5本塁打と大暴れで締めくくっており、勝負の9月をいい形で迎えた。
なによりもチームの3連覇のために...。この男が目覚めたとなれば、これ以上心強いことはない。9月戦線は鷹を引っ張る柳田悠岐に注目だ。