地元でVに機運が高まるも...
史上最多3万2546人もの観衆が詰めかけたマツダスタジアム。今や不動のストッパーとなった中崎翔太が最後の打者を打ち取るも、ベンチから飛び出す選手もいなければ、スタンドから紙テープが放り込まれることも無い。
いつものように外野の3人がセカンドベース付近でジャンプをし、体をぶつけあう勝利のパフォーマンス。そしてハイタッチ...。すべてが“普段通り”の光景だった。
マジック2で8日の試合を迎えた広島。優勝するためには勝利が絶対条件であり、そこは見事にクリアした。しかし、もうひとつの条件が満たされなかった。「2位・巨人が敗れる」というものだ。
甲子園球場で行われた伝統の一戦は、阪神が7回まで1-0でリード。その経過はマツダスタジアムのファンも逐一チェックしており、なんなら球場のビジョンでも紹介されていたくらいであった。
ところが、だ。好投していた阪神先発の青柳晃洋が8回にピンチを招いて降板すると、2番手で登場した藤川球児が坂本勇人に3ランを被弾。一振りで試合をひっくり返されると、そのまま1-3で敗れてしまった。
この瞬間、広島の優勝はお預けとなることが決定した。
「移動日優勝」なら球団36年ぶり...
最もつらいのが、25年ぶりの胴上げを地元で見られない可能性が非常に高まったことだろう。
広島は今日からしばしのロードに出る。次のホーム開催は15日(木)までなく、そこまで広島が負け続けて巨人が勝ち続けるというのは考え難い。
しかも、そんな中でもっと“恐ろしい問題”が浮上している。それが「移動日優勝」である。
広島は今日が移動日のため試合はないが、2位の巨人は試合がある。神宮球場でのヤクルト戦。もしここで巨人が敗れるようなことがあれば、広島は試合がないにも関わらず優勝が決定してしまうのだ。
「地元で決められないのは良いにしても、せめて試合がある日に決めさせてあげてくれ...」
広島ファンは心からそう願っている。
ちなみに、「移動日優勝」は過去にもあった。1980年、古葉竹識監督が率いたチームは新幹線の中でその一報を聞き、監督が車内でインタビューを受ける映像も残っている。
果たして、25年ぶり歓喜から一転、36年ぶりの“微妙な盛り上がり”となってしまうのか。そして、奇しくもその広島の命運を左右する巨人の先発が大竹寛というところも非常におもしろい点である。
広島の歴史的独走となった今年のセ・リーグがどんな結末を迎えるのか、今から楽しみだ。