オリックスに差した希望の光
パ・リーグ最下位に沈み、クライマックスシリーズの出場が完全消滅するなど、事実上の“終戦”を迎えたオリックス。しかし、チームに漂うのは暗いムードだけではない。
最終盤のチームに希望の光をもたらしている一人のスラッガーがいる。ドラフト1位ルーキーの吉田正尚だ。
順調なスタートも...
ルーキーは開幕一軍入りを果たすと、開幕戦に「1番・指名打者」でデビュー。球団の新人では73年ぶりとなる“開幕戦のトップバッター”
を勝ち取り、プロ初安打を含む5打数2安打としっかり結果も残してみせた。
ところが、開幕から1カ月を迎えようというところでアクシデントに見舞われる。「7番・左翼」で出場した4月23日のロッテ戦で腰痛を発症し、無念の途中交代。翌24日には登録を抹消され、そこから長い二軍生活に入った。
実戦復帰は7月の下旬。思いのほか時間を要したものの、8月12日に一軍復帰を果たすと、そこから男の逆襲がはじまる。
復帰後は28戦9発、長打率は6割超!
復帰した12日の西武戦こそ4タコで終わるも、翌13日のゲームでは二塁打2本をマーク。18日の日本ハム戦では先発に転向した直後の増井浩俊から嬉しいプロ初アーチを記録すると、一気にギアを上げた。
一軍復帰以降だけで見ると、28試合で.323というハイアベレージ。9本塁打、24打点の大暴れで、出塁率と長打率を合わせたOPSは1.079と驚異的な数字を叩き出している。
もしもフルシーズン出ていたら...。野球に“タラレバ”は禁物なのだが、そういう気持ちが出てしまうのも仕方がないと思えるほど打ちまくっているのだ。
【復帰後の吉田正尚】※8月12日~9月14日
28試 打率.323(99-32) 本塁打9 打点24
四球16 死球1 三振11 盗塁0(盗塁死2)
出塁率.422 長打率.657 OPS1.079
「もしも吉田正尚がフルシーズン出ていたら...」
ということで、ここまでの吉田の数字から様々な「もしも」を試算してみた。
吉田が9本塁打を記録するのに要した打席数は200。「もしもこのペースで規定打席に到達していたら」で計算してみると、19.9本という数字になる。ちなみに、ルーキーイヤーに20本塁打に到達となれば、プロ野球史上15人目の快挙だ。
なお、9本の本塁打はすべて8月12日の一軍復帰後に放ったもの。一軍復帰以降の“116打席”で計算し直してみると、なんと34.3本。いまの吉田は「規定到達で30発超え」というハイペースで本塁打を量産しているというわけだ。
かつては松井秀喜や松中信彦といった伝説のスラッガーたちが本塁打争いを盛り上げたが、今のなっては左の和製大砲は希少。ちなみに、日本人左打者の本塁打王というのはチームの先輩であるT-岡田が最後だ。
オリックスに限らず、日本球界にとっても大きな希望の光――。彗星の如く現れた“小さなスラッガー”のこれからがたのしみだ。