最下位・オリックスに差す希望の光
現在パ・リーグ最下位に沈むオリックスであるが、楽しみな選手が出てきた。ドラ1ルーキー・吉田正尚である。
9月1日のロッテ戦、8回一死一塁の場面だった。左腕・藤岡貴裕が投じたボール気味の内角直球を、迷いなく振り切る。フルスイングから放たれた打球は、ライトスタンド中断に突き刺さる豪快な5号2ランとなった。
小柄な体から豪快なフルスイング
福井県福井市出身の吉田。6歳から野球をはじめ、県内の強豪・敦賀気比高に進学すると、1年夏の甲子園から早速4番に抜擢。その後は進学した青山学院大でも打力を買われ、1年春から4番打者を任されている。
4年時には2015年夏季ユニバーシアードの日本代表に選出され、主に4番を務めて優勝に大きく貢献。世代を代表する強打者として高く評価され、2015年のドラフト会議でオリックスからドラフト1位指名を受けた。
プロ入り後も順調そのもの。「1番・指名打者」として開幕スタメンをつかみ取ると、開幕戦でいきなりマルチヒットをマーク。プロの公式戦にも臆することなく、開幕6試合連続安打、10試合連続出塁を記録するなど、即戦力の評価通りに活躍を続けていた。
プロ初本塁打から12試合で5発の固め打ち
ところが、4月23日のロッテ戦で腰痛を発症して途中交代。当初は10日程度で復帰できると見込まれていたものの、結局3カ月以上の離脱を余儀なくされてしまった。
しかし、8月12日の復帰以降はまさに絶好調。復帰後は20試合で打率.343、5本塁打で13打点。8月26日の楽天戦から3番に抜擢されるようにもなった。
中軸のプレッシャーもなんのその。3番での成績も打率.353で4本塁打を記録するなど、苦しむチームの中で大暴れを見せている。
猛牛軍団の未来を担う男
もしケガさえなければ...。言い出すとキリがないが、新人王も狙えた逸材であることは間違いない。だが、やはりその“ケガ”が一番怖い。
吉田は、春季キャンプ中にも左ふくらはぎ痛と右脇腹痛による離脱を経験している。プロで一流と呼ばれ長く活躍できる選手は、一様にケガに強い。プロ人生を歩みはじめたばかりの吉田にとって、今後は「強い体づくり」というのも重要な課題となってくるだろう。
とはいえ、最下位に沈むチームとファンにとって、吉田の活躍はこの上ない吉報だ。
オリックスのチーム本塁打は63本。これはトップ・日本ハムの110本や2位・西武の105本など、他球団に大きく水を開けられたリーグ最下位。もっと言えば12球団ワーストの数である。
最大の課題となっている長打力不足の解消へ...。頭角を現しつつある若き和製大砲は、オリックスの未来を変えるかもしれない。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)