ルーキーリーグから一気に駆け上がってきた中後
今季も多くの日本人選手がMLBで活躍しているが、近いうちにMLBでプレーする日本人選手がもうひとり出てくるかもしれない。
アリゾナ・ダイヤモンドバックス傘下のマイナーでプレーしている中後悠平投手である。中後は2011年ドラフト2位で近畿大からロッテに入団した。変則的な左のサイドスローということもあり、開幕一軍の座をつかむと1年目から27試合に登板。しかし、2年目、3年目は一軍登板がともに5試合終わると、4年目の昨季は一軍登板がないまま、10月に戦力外通告を受けた。
その後、12球団合同トライアウトに参加し、BCリーグの武蔵ヒートベアーズへの入団が決まったが、MLB関係者も中後に興味を持っていた。最終的に、アリゾナ・ダイヤモンドバックスのスプリングトレーニングに招待選手として参加することが決まり、中後の新たな挑戦がはじまることになる。
6月にマイナーリーグのなかでも一番下のランクであるルーキーリーグでアメリカ初登板を果たした中後は、1A、1Aアドバンスと順調に昇格。1Aアドバンス昇格当初は失点することもあったが、7試合連続無失点と結果を残し、7月下旬からはクローザーとしても起用された。
そして、8月。中後は1Aアドバンスから2Aを飛び越えて、マイナーリーグ最上位の3Aにいきなり昇格した。3Aでは11試合に登板し、7回2/3を投げ、無失点。奪三振率は驚異の11.84を誇る。日本では制球難に苦しんだが、3Aでは与四球率1.17と数字の上では改善されている印象だ。日本の選手ほど球を見極めてくるわけではないアメリカのマイナーリーグの選手に、中後の荒れ球が威力を発揮しているのかもしれない。
セプテンバー・コールアップでメジャー昇格も!?
では、中後がメジャーに昇格する可能性はどれくらいあるのだろうか。ダイヤモンドバックスは54勝76敗でナショナル・リーグ西地区の最下位とプレーオフ進出は絶望的だ。よって、来季を見据えた戦いにシフトしつつある。
マイナーリーグのレギュラーシーズンは9月上旬に終わり、その後は各クラスでプレーオフが行われる程度のもの。そのため、来季以降を見据え、傘下所属のマイナーリーガーのなかから将来有望な選手をメジャーのベンチに入れることも珍しくない。8月までは25人しかメジャーのベンチには入れないが、9月からは「セプテンバー・コールアップ」と言って、メジャー40人枠のなかから試合ごとにベンチ入りの選手を決められるようになる。つまり、ダイヤモンドバックスが中後を来季以降の戦力として考えてメジャー契約を結んだ場合、今季中にメジャーのマウンドにあがる可能性があるというわけだ。
ダイヤモンドバックスで30試合以上投げているリリーフ投手で左腕はアンドリュー・チェイフィン(32試合登板)しかいない。左腕不足の解消のため、中後に声がかかることも十分に考えられる。1年前の今頃は、ユニフォームを脱ぐかもしれなかった男が、メジャーのマウンドに立つ日はやってくるのか。アメリカンドリームが現実になるか否か、注目して見守りたい。
※数字は日本時間8月28日終了時点
文=京都純典(みやこ・すみのり)