気迫の走りで2差に…あすから直接対決
その瞬間、球場内がどよめいた。
西武プリンスドームで行われた西武-楽天戦の4回裏、二死走者なし。楽天・長谷部康平の投じたスライダーが金子侑司の右ヒザに当たった。
そのまま打席に倒れ込んだ金子。なかなか起き上がることができなかった。
金子は、17日の試合で3盗塁を決め、50盗塁を達成。盗塁数トップのオリックス・糸井嘉男に肉薄した。18日の試合で糸井が1盗塁を決めたため、19日試合前までの糸井との差は「3」。逆転盗塁王を十分に狙える位置につけている。
そんな中、期待のスピードスターを襲ったアクシデント。金子は辛うじて立ち上がり、治療のためベンチへ戻ったが、その間、場内は不安と緊張に満ちていた。
しかし数分後、金子は戻ってきた。痛みをこらえながらも一塁へと向かう金子に、場内からは大きな拍手が沸き起こった。
そして、続く秋山翔吾の打席。初球を投げる前に2度のけん制を受けるも、初球から躊躇せずスタート。51個目の盗塁を決めた。大歓声の中、金子は笑顔を見せた。
「痛みはあったんですけど、それよりも走りたい、チャンスを作りたいという気持ちが強くて。(走る時には)痛さも忘れてました」。気迫の走りで糸井との差を再び「2」に戻した金子は「(成功できて)良かったです」とほっとした表情をのぞかせた。
あすからは、オリックスとの“直接対決”。「特別意識はしていませんが、周りからは色々言われると思うので」と苦笑い。「いつも通りの走りができれば」とあくまで“通常走行”でいく。
それでも「離されたくはないですね。何とか食らいついていけたら」と意気込むその目は、闘志に満ち溢れていた。