筒香に食らいついていった大ベテラン
今をときめく“日本の主砲”といえば、DeNAの筒香嘉智。キャリア最高となる44本塁打、110打点という成績を叩き出し、セ・リーグの二冠王に輝いた。
そんな筒香と終盤まで打点王争いを演じ、タイトルレースを盛り上げていた選手を覚えているだろうか。広島の4番・新井貴浩である。
39歳のベテランはとにかく勝負強い打撃でチームに貢献。25年ぶりのリーグ優勝に大きく貢献した男の一人だ。この争いに注目が集まった大きな要因というのが、両者を比較したときの「本塁打の差」だった。
筒香は上述の通り44本塁打で110打点だったのに対し、新井はなんと19本塁打で101打点を記録。その差は「25本」もありながら、新井は終盤まで食らいついていったのだ。
これこそが“4番の仕事”
「20本塁打に届かずも、100打点以上をマーク」となると、実は結構めずらしい。
この10年の間に「シーズン100打点以上」というのは44度も達成されているが、その中で本塁打が20本未満だったというケースはわずかに7例しかない。以下がそれに該当する選手たちのまとめ。
【20発未満で100打点】
<2010年>
・小谷野栄一(日本ハム)
☆16本塁打 109打点
・新井貴浩(阪神)
☆19本塁打 112打点
・鳥谷 敬(阪神)
☆19本塁打 104打点
・井口資仁(ロッテ)
☆17本塁打 103打点
<2011年>
・中島裕之(西武)
☆16本塁打 100打点
<2016年>
・新井貴浩(広島)
☆19本塁打 101打点
・内川聖一(ソフトバンク)
☆18本塁打 106打点
※所属は当時のもの
今シーズンは新井だけでなく、ソフトバンクの内川聖一もこれをクリア。これは2011年の中島裕之(当時西武)以来で5年ぶりのことであり、同一シーズンに複数人が達成となると2010年以来で6年ぶりのことなのだ。
ちなみに、新井は自身2度目の達成。かつては43本塁打で本塁打王に輝いた経験も持つ大砲であったが、近年はチャンスに強いクラッチヒッターへとモデルチェンジに成功している。
そして、新井や内川といったいわゆる“長距離砲”ではない選手が4番を務めるチームが、共にこの時期まで試合を行うことができているという事実も興味深い。
大事なのは“飛距離”ではないのだ。確実にチャンスをモノにし、チームを勝利に導くことこそが4番の仕事なのだと、改めて実感するシーズンとなった。