「推定年俸って、本当にあってるの?」
この時期の野球界の主なニュースと言えば、契約更改になるだろう。
取り上げられるのは、球団との話し合いの末に決まった“来年の給料”。これが報道される時、ほとんどの場合「※金額は推定」という文言と共に伝えられる。
新聞やテレビで報道される「推定」とは一体誰が推定しているのか。そして、果たしてその見立ては合っているのだろうか...。元プロ野球選手の増渕竜義氏に話を聞いた。
だいたい合ってる
この時期、スポーツ新聞などを見ると、契約更改の話題が掲載されています。誰が年俸1億円とか、大幅アップやダウンとか、毎日すごいですよね。
ここで読者の方が不思議に思っている部分があるかと思います。金額の最後にカッコで書かれる「金額は推定」という文字です。
まず結論から言いいますと、新聞などで報道している金額は“おおよそ正解”です。球団側からはっきりとした金額が発表されるわけでもないのですが、記者の人たちの取材力ってすごいなと思います。
契約更改が終わると、報道陣が待つ記者会見場に行きます。そこで報道陣の方々の質問に答えるのですが、まずは「サインはしましたか、それとも保留ですか?」の質問から始まります。
その後には「上がりましたか?下がりましたか?」と質問が来て、中には「ズバリいくらですか?」と核心に迫る記者の方もいましたね。
僕の場合は隠す必要もないと思っていたので、聞かれたことはすべて答えていました。なので、僕の年俸は全員が知っていることになります。ちなみに、僕の周りの選手たちは正直に話す選手の方が多かったですね。なので報道通りの額面で“ビンゴ”だと思います。
しかし、中にはダウン提示であったり、金額に納得のいかない選手もいるでしょうから、そういった選手たちは言葉を濁したりもします。
そのような選手たちには、記者の方もある程度の金額を想定して「これくらいですか?」なんて聞いたりしますが、選手もあいまいに「そうですね」というようなやり取りになります。
鵜呑みにするのは危険?
ただし、契約事項には表に出てこないいろいろな条件が入っているケースもありますので、金額のズレが生じるとしたらそういった点があるかと思います。
なので、ある程度は信用して良いと思いますが、新聞に掲載されている情報すべてが正しいとは限らないというのも事実なのです。
それにしても、もらっている給料が公になるっていうのは特殊な職業だなぁと思いますし、現役のころは「俺の給料を聞いて、なんか意味あるのかな」なんて思ったりもしました。
たとえば、トップ中のトップの選手に見る「年俸5億円」であったり、その年大活躍した選手の大幅アップなんかはすごいなと思いますし、ファンの関心も高いのでトップニュースにもなるかと思います。
そういったニュースを見て、「ああいう選手になりたい」と発奮する若手選手もいるでしょう。しかし、そんな大台に乗る選手というのは、たくさんいるプロ野球選手の中でもほんの一部なのです。
一般の会社でも「ボーナスが上がった」とか「給料が下がった」とかはあると思いますが、プロ野球の世界も一緒。上がったら嬉しいですし、下がればがっくりです。
いずれにしても、金額は隠していても“推定”として公にされてしまうもの。笑顔で堂々と金額を言えるような活躍ができるといいですね。