コラム

“伝説”への挑戦権を得たオリックス・吉田正尚

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本塁打王争いも...!?


 オリックスの2年目外野手・吉田正尚が新シーズンへ向けて順調な仕上がりを見せている。

 2月16日、紅白戦でこの春2本目となる本塁打をマーク。8日に記録した1本目は一軍でほとんど実績がない齋藤綱記の高めの甘い球をとらえたものだったが、この日の相手は佐藤達也。昨季は防御率5.01とふがいない数字を残してしまったものの、2013年、2014年と2年連続で最優秀中継ぎ投手のタイトルに輝いた実績十分の右腕だ。

 しかも、佐藤が投じたボールは決して甘いものではなかった。内角の膝元に近いスライダーだったが、吉田は迷いなく振り切る。代名詞である豪快なスイングから放たれた打球はぐんぐんと伸び、右中間奥の林へと消えた。オリックスファンならずとも鳥肌が立ってしまうようなド派手な一発だった。


 プロ1年目の昨季は開幕から好調を維持していたものの、腰椎の椎間板症により4月24日に出場選手登録を抹消。一軍に復帰したのは8月12日のことだった。

 シーズンの多くを棒に振ることとなったが、わずか63試合・258打席の出場で10本塁打を記録したことで大きな注目を集めた。自身が今季の目標に掲げる「全試合出場」を果たせば、2年連続の2ケタ本塁打達成は当然として、本塁打王争いを演じることも十分に考えられる。


王や野村も達成できなかった“新人2ケタ本塁打”


 そんな大きな期待を集める吉田もまだプロ2年目。長いプロ野球の歴史のなか、ルーキーイヤーから本塁打を量産し続けた先輩たちのとんでもない記録を振り返ってみよう。以下は、「新人からの連続シーズン2ケタ本塁打ランキング」である。

【新人からの連続シーズン2ケタ本塁打】
1位 21年 清原和博(元西武ほか/1986年〜2006年)
2位 20年 張本 勲(元東映ほか/1959年〜1978年)
3位 18年 山本浩二(元広島/1969年〜1986年)
4位 17年 長嶋茂雄(元巨人/1958年〜1974年)
4位 17年 有藤通世(元ロッテ/1969年〜1985年)
6位 16年 江藤慎一(元中日ほか/1959年〜1974年)
6位 16年 田淵幸一(元阪神ほか/1969年〜1984年)
6位 16年 阿部慎之助(巨人/2001年〜2016年) ☆現役
9位 14年 原 辰徳(元巨人/1981年〜1994年)
9位 14年 村田修一(巨人/2003年〜2016年) ☆現役

 1位は清原和博(元西武ほか)の21年連続。“無冠の帝王”の異名そのままに、打撃主要3部門の個人タイトルはなくとも、このランキングでは堂々のトップである。

 なお、“世界のホームラン王”こと王貞治(元巨人)の名前がないことを意外に感じた方もいるかもしれないが、王は新人だった1959年は7本塁打に終わっているため、このランキングには名を連ねていない。また、野村克也(元南海ほか)もプロ4年目に30本塁打を記録するまで、最初の3年間は2ケタ本塁打に届かなかった。


 球史にその名を残す打者と言えど、新人から2ケタ本塁打をマークすることは難しいということ。そもそも、昨季の新人で2ケタ本塁打を達成したのは、吉田ただひとりだ。

 ちなみに2位は高山俊(阪神)の8本、3位は茂木栄五郎(楽天)の7本と続き、4位になると戸柱恭孝(DeNA)の2本と、2ケタからはほど遠い数字となっている。

 このランキングへの“参加資格”を得られるのは、ひと握りどころか“ひとつまみ”程度の選手に限られるのだ。十数年後、吉田がこのランキングに顔を出すような選手になっているだろうか。


 昨季は最下位に終わったオリックス。評論家たちが語る今季の展望を見ても、下位予想されているケースがほとんどだ。ただ、野球はひとりでは戦えないことと同時に、ひとりの存在がチームを劇的に変えることがあるのもまた事実。

 2年目の吉田にそんな重責を担わせることは避けたいものの、そんな期待すらしたくなる男なのだ。


文=清家茂樹(せいけ・しげき)
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