巨人の不安要素
まるでこの1か月の戦いぶりを象徴するかのような試合だった。26日、本拠地・東京ドームでロッテの前に4安打完封負け。これで巨人はオープン戦を5勝14敗、勝率.263の最下位で終えた。チーム打率.196は12球団最低、チーム防御率4.27も11位と悲惨な内容である。
WBCの侍ジャパンに坂本勇人、菅野智之、小林誠司といった投打の主軸を派遣したと言っても、4年前の13年大会では12球団最多の7名が代表選出されながらもオープン戦首位で終えたことを考えると、チーム全体の選手層があの頃より薄くなっているのは事実だろう。今回はオープン戦から見えてきた由伸巨人の4つの不安要素をチェックしてみよう。
1.レギュラー陣の高齢化
4番候補として獲得したマギーは楽天時代と比較すると明らかに太り過ぎで動きにキレがなく、2000安打まであと83本の阿部も一塁守備では昨季10失策と起用法が難しい。この中では1番若い長野もここ数年成績は頭打ち。昨季と同じく3番坂本頼りの打線は、事実上「4番不在」のまま開幕を迎えることになる。
2.補強組は機能するのか?
ストーブリーグでは史上初のFA選手3人同時獲得が話題となったが、主力の高齢化を埋めようと補強したはずの彼らの離脱で大きく狂った感のあるチーム編成。
陽岱鋼と山口俊は故障を抱えオープン戦出場なし、森福允彦は6試合で防御率5.40。ドラフト1位吉川尚輝、2位畠世周もコンディション不良でキャンプでは三軍生活が続いた。前述の通りマギーも苦しんでおり、開幕時に戦力として期待できそうなのは日本ハムからトレード移籍の吉川光夫、石川慎吾だろうか。
特にサウスポーの吉川には先発ローテの一角として30代中盤の杉内俊哉、内海哲也らの衰えをカバーする働きが求められる。
3.チームを活性化する若手不在
代表組不在、主力の不振、こんな時こそ若手に出てきてほしいところだが、オープン戦で結果を残したのは14試合で3割を越える打率を残した立岡宗一郎くらい。
この2年間の一軍の試合で守備に就いた20代捕手は、小林誠司のみという現状を打破する人材として期待された、大卒2年目キャッチャーの宇佐見真吾は率.143とセールスポイントの打撃でアピールならず。
重信慎之介も8盗塁と足は絶好調だったが、肝心の打撃や守備面で多くの課題を露呈。数少ない明るい材料の岡本和真は途中スランプに悩まされたものの2本塁打を放ち成長の跡は示した。
今季から本格的に挑戦中の外野守備は現状一軍レベルには程遠いが、やはり東京ドームのバックスリクーン直撃弾を打てる長打力は魅力的だ。早いものでプロ3年目、本人のキャリア的にも、チームの世代交代という面でも起用するなら今しかないという選手だ。開幕スタメンに岡本の名前があるのか注目したい。
4.ブルペン
原巨人時代の強さはいわば「鉄壁ブルペン」をベースに成り立っていたと言っても過言ではない。しかし、9年連続60試合登板とフル回転し続けた頼みの山口鉄也は勤続疲労で往年のキレはなく、マシソンも来日5年で通算300試合登板と明らかに登板過多だ。
どうやら新外国人右腕カミネロを新たな抑え投手として起用することになりそうだが、西村健太朗、沢村拓一と歴代クローザーがことごとく数年しか持たずに故障してしまっているのも気にかかる。根本的な投手起用法の再考も含めて、ブルペン再構築の1年になるだろう。
08年にはオープン戦最下位からリーグ優勝を勝ち取った巨人だが、開幕後もこの状態が続くようなら、由伸監督はペナントを戦う中で、現役時代ともに戦ったベテランたちに自ら引導を渡すことになりそうだ。果たして2017年シーズンの運命はいかに…?
文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)