コラム

日米野球でも見たかった…BIG3世代の“若き打撃職人” ソフトバンク中村晃の球歴とは

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日本S第4戦の延長10回にサヨナラ3ランを放ちガッツポーズするソフトバンク中村=10月29日・ヤフオクドーム © KYODO NEWS IMAGES
中村晃 ,

日本一に王手をかけた劇的サヨナラ3ラン


 ソフトバンクの4勝1敗で終わった日本シリーズ。大事な初戦を敵地で落としたものの、そこから4連勝と強さを見せつけての日本一だった。

 第2戦は武田翔太の「魔球」でイヤなムードを断ち切って勝利。第3戦では難病から復活した大隣憲司が好投し、打線もかみ合って連勝。延長戦となった第4戦は、6番・中村晃のサヨナラ3ランで王手。この勢いに日本一を確信したホークスファンは、多かったのではないだろうか。

 今季、リーグ最多安打176本を放った中村だが、ホームランは4本。プロ7年間でもわずか9本である。が、高校時代は通算60本塁打を放ったスラッガーだった。

 中村は埼玉県出身。小学校2年で野球を始め、朝霞市立朝霞第二中学校では軟式野球部に所属。エースで主軸を務めていた。同校は中里篤史(元・中日ほか)の母校で、中里と中村は所属した少年野球チームも同じだったという。朝霞二中は、中村の在学中は2年夏の県大会ベスト8が最高成績で、全国大会には届かず。中村個人としては、3年春、選抜チーム「藤倉オールスターズ」の主力メンバーとしてKボール(硬球と同じ硬さと重さのゴム製ボール)全国大会に出場し、3位となっている。

 中学卒業後に選んだのは、全国屈指の強豪・帝京高校(東京)。藤倉オールスターズのOBが進学していたこともあり、決めたという。同級生に大田阿斗里(現・DeNA)ら逸材投手がいたため、打撃を生かすべく野手に転向。名将・前田三夫監督による厳しい指導で知られる同校で、1年春から起用されて注目を集めた。しかし、本人は「体力がなさすぎて、1年冬まで練習についていけなかった」と振り返っている。

 同校伝統の「食事トレーニング」と猛練習でパワーがつき、2年春から4番に。高校通算60本塁打の飛距離とともに、天才的なバットコントロールとスイングスピード、積極的な走塁も高く評価されていた。甲子園には2年夏(ベスト8)、3年春(ベスト4)、3年夏(ベスト8)と3季連続出場を果たし、高校野球を終えた。


「打撃職人」の本領発揮、そして、侍ジャパンまで上り詰める!


 中田翔(大阪桐蔭高→日本ハム)、唐川侑己(成田高→ロッテ)、佐藤由規(仙台育英高→ヤクルト)が「Big3」と呼ばれた2007年のドラフト。中村もドラフト候補として、「目標は岩村明憲選手(当時、デビルレイズ)。小さい頃からめざしているのは三拍子そろった選手です」と語っていた。

 迎えたドラフト会議では、高校生3巡目(実質の順番は2番目)でソフトバンクが指名。「将来の3番候補」「3割を10年続けられる選手」と期待を集めた。1~3年目は1軍出場なくファーム生活。休日返上で練習するなど、首脳陣が感心するほど野球に打ち込んだという。特にバッティングへの取り組みは、若くして「打撃職人」といわれるほど。その結果、4年目となる2011年、故障者続出により1軍初スタメンのチャンスを得ると、いきなり猛打賞。5年目の2012年はファームで首位打者、最高出塁率、月間MVP(3、4月)を獲得。6年目の昨季は1軍で109試合出場、打率.307。シーズン中のインタビューでは「試合に出て、野球ができる幸せを感じながらやっています」と語るなど、確実に実力をつけ、実績を重ねてきた。

 7年目の今季は、開幕スタメンを勝ち取り143試合に出場。リーグ最多安打に、日本シリーズMVPの内川聖一を上回る打率.308(リーグ4位)。勝負強い打撃と外野守備でリーグ優勝に貢献した。しかし、CSは打率.077と絶不調。日本シリーズも第3戦まで11打数1安打、打率.091と不調が続いていた。

 本人も「本当に迷惑をかけていた」という状態で迎えた日本シリーズ第4戦。延長10回裏、2死一、二塁の場面。打撃職人らしくファウルで粘りながらフォームを整え、カウント1-2、阪神の守護神・呉昇桓の5球目をライトポール際へ叩き込んだ。これまで経験がないというサヨナラホームラン。「切れるかも」と思ったそうだが、すぐに雄叫びとともに両手を挙げた。試合後は「最高の手応え。こんな大舞台で打つことができて、最高の一発です」。日本一に王手をかけた一打にファンも熱狂した。

 翌日の第5戦を1-0で勝利し、3年ぶりの日本シリーズ制覇を果たした中村だったが、5試合で残した打率は.150。最後に課題を残したことは、職人技をさらに磨き上げる糧となるはずだ。

 怪我で辞退したものの、日米野球の侍ジャパンメンバーに選出されるなど、大きな飛躍を遂げた2014年シーズン。来季はどのような選手へと成長するのか、楽しみである。

文=平田美穂(ひらた・みほ)
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