待望の正捕手候補登場に新人王・大瀬良の大物ぶり
2014年ドラフト会議も終わり、来季開幕までは各球団の有望新人たちが大きな注目を集めることになる。では、2013年ドラフトの新人たちの今季の働きぶりはどうだったのか。セ・リーグ6球団について振り返ってみたい。
もちろん、ドラフトは中長期的なチームの展望があってのものだけに、わずか1シーズンで評価することはできない。ただ、即戦力と目した選手が期待通りの働きをこなせたかを見れば、チームのスカウト力をうかがい知ることはできそうだ。
巨人はドラフト1位・小林誠司の活躍に尽きる。けがや不振が目立ち始めた阿部慎之助に代わり29試合でスタメンマスクをかぶった。来季、阿部を一塁に専念させることも、小林を将来の正捕手とするめどが立ったから決断できたことだ。打撃に専念すれば、阿部はまだまだ怖い選手。そういう意味での貢献度も高いといえる。ただ、小林以外の新人は高卒が中心とあって一軍出場はなし。戦力としての新人の活躍という点では今ひとつか。
小林同様、選手生命の長い捕手の世代交代をにおわせる意味では、阪神の梅野隆太郎も光った。チーム最多67試合でスタメン出場し、7本塁打とパンチある打撃を披露。新人捕手での開幕戦出場、開幕カード安打、2打席連続本塁打はいずれも田淵幸一以来45年ぶりとあって、長年、生え抜き正捕手不在に嘆く虎党を歓喜させた。また、投手3人はそろって一軍出場。中でもドラフト最下位の岩崎優は急きょ開幕ローテ入りするといきなり初登板初勝利を挙げるなど5勝をマーク。ドラフト1位・岩貞祐太がけがで出遅れ1勝に終わった中、うれしい誤算となった。
ゴールデンルーキー・大瀬良大地が期待通りの働きをしたのが広島。開幕から先発ローテを守り、セ・リーグの新人では、ただ一人、規定投球回を達成。10勝を挙げ、圧倒的な得票数で新人王に。阪神とのCSファーストステージ第2戦では7回無失点に抑えるなど、大舞台でも物おじしない大物ぶりを見せつけ、充実のシーズンを終えた。また、チーム唯一の新人野手・田中広輔は夏場からスタメンに定着。新人最多の110試合に出場し、規定打席には届かなかったものの、打率.292、9本塁打をマーク。また、10盗塁を記録するなど、広島らしく足でも魅せた。
活躍が目立った変則投手の本当の勝負は来季以降
又吉克樹が67試合、祖父江大輔が54試合に登板と、二人の中継ぎ投手が大車輪の活躍を見せたのが中日。又吉はサイドスローから繰り出す最速151キロの速球とキレのあるスライダーを武器に勝ちパターンの継投に定着。11.51という驚異的な奪三振率のほか、被打率.178、防御率2.21など、数字の上でも上位に食い込み、新人王争いでは大瀬良に次ぐ2位の票を獲得。祖父江は、独特の小さいテークバックの、又吉とはまた違った変則スタイルで打者を翻弄。場面を問わず、まさにフル回転した。
DeNAではなんといっても三上朋也。山口俊の不調もあって、開幕直後の4月から野球人生初のクローザーへ転向すると、サイドスロー、スリークォーターを使い分けるスタイルで21セーブを積み上げ、木塚敦志が持っていた球団新人最多セーブ記録を更新した。また、萬谷康平は26試合に登板し、6月22日の西武戦では初勝利。育成ドラフト出身選手が新人年で勝ち投手となったのは史上二人目だ。
投手のコマ不足が深刻なチーム事情を反映してか、ヤクルトでは4人の新人投手のうち3人が一軍登板を果たした。中でも特筆すべきは秋吉亮。投球時に左腕を開く独特の右サイドスローから繰り出すスライダーとチェンジアップで強打者を幻惑。開幕直後は先発として2連敗を喫すも、中継ぎ転向後は安定した投球を続け、シーズン最終盤にはクローザーも務めた。
あらためて振り返ると、大瀬良、田中が投打において欠かせないパーツとなった広島が、今季の“新人活躍度”では一歩抜けていたと言っていいだろう。また、文中では触れなかったが九里亜蓮の貢献も見逃せない。開幕直後に2勝を挙げた後は勝ちにこそ恵まれなかったが、九里が16試合に先発したことでチームはローテーションを回すことができた。2年連続Aクラス入りは、彼らの奮闘あってこそのものだ。
また、又吉、祖父江、三上、秋吉ら、変則スタイルの新人投手の活躍が目立ったのも今季の特徴だ。そういう意味では、対戦相手の研究が進む来季以降に、彼らの本当の勝負が待っているのかもしれない。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)