上位球団は“勝利の方程式”、先発ローテに新人が定着
プロ野球界において、即戦力と目される新人たちが見込み通りに活躍するか否かは順位を左右することにもつながっている。今季のパ・リーグは、Aクラス、Bクラスが2013年シーズンとそっくり入れ替わった珍しいシーズンだったが、新人選手に絞って、今季の活躍度を改めて振り返ってみたい。
オリックス投手陣といえば金子千尋、西勇輝の2枚看板だが、“新人2枚看板”も黙ってはいない。ドラフト1、2位コンビの吉田一将、東明大貴がそろって5勝を挙げた。同い年で、ともに速球とスライダーを武器にする右の本格派。即戦力と見込まれていた二人だけに、なんら不思議ではない活躍だろう。ただ、「社会人ナンバーワン」との前評判に「1年目は10勝が目標」との本人の発言も考えれば、吉田には新人王を争うくらいの成績がほしかったといえばぜいたくか。
日本ハムは新人8人のうち7人が一軍デビューした。急速に世代交代が進むチーム状況が新人登用においても垣間見られる。中でも一軍の確かな戦力として活躍したのは浦野博司。キレ味鋭いスライダーを武器に4月から先発ローテ入り。大谷翔平、中村勝、上沢直之ら若き先発投手陣に続くチーム4位の7勝をマーク。来季は“年下の先輩”たちに追い付き追い越すような活躍が期待できそう。
セ・リーグ同様に目を引く新人捕手の活躍も…
ロッテではなんといっても新人王・石川歩の活躍が光った。安定したフォーム、制球の他、鋭いけん制に軽快なフィールディングなど、投手としての完成度が高く、開幕から先発ローテ入り。先発2戦目で初勝利を完投で飾るなど、セ・リーグ新人王の大瀬良大地と並び10勝をマークし、いきなりチームの勝ち頭に。同一リーグではないため一概には比較できないが、平均防御率3.89のセ・リーグでの大瀬良の防御率4.05に対し、平均防御率3.60のパ・リーグで残した3.43という防御率を見れば、安定感では一枚上手だ。また、吉田裕太は捕手としてチーム最多タイの50試合に出場。今季引退した里崎智也の後継者として、チームの期待値の高さがうかがえる。
同じく捕手として大器の片鱗を見せたのが西武の森友哉だ。守備面ではまだまだ課題が山積しているが、高校通算41本塁打はだてではない。小柄ながら高い長打力と抜群のミート力でともに新人最多の6本塁打、15打点を記録。高卒1年目にして、代打のコールがかかるだけで球場を沸かせるなど、将来、球界のスターとなることは間違いない逸材。
ゴールデンルーキー・松井裕樹が注目を集めたのが楽天。チームはもちろん、プロ野球ファンからも大きな期待を寄せられた高卒ルーキーは、開幕早々に制球難という大きな課題を露呈し4勝8敗という成績に終わった。ただ、リーグワースト2位の67四球を記録した一方で、リーグ5位の126奪三振がきらりと光る。まだ19歳。来季以降の躍進が待たれる。松井に注目が集まる陰で中継ぎとして活躍したのが西宮悠介。勝ちパターンの継投入りとはならなかったが、新人では森唯斗に次ぐ46試合に登板し3勝、防御率3.17の堂々たる成績を残した。
こうして振り返ると、上位3球団にはいわゆる“勝利の方程式”や先発ローテーションの一角で新人投手の貢献が見られた。それがそのまま順位に直結したとはいわないまでも、即戦力新人たちの活躍が少なからず順位を左右したと見ていいだろう。
また、新人野手がいきなりプロの世界で活躍することがいかに難しいかということを改めて感じられたのも事実。その中にあって、捕手の吉田裕太、森友哉は、セ・リーグの小林誠司(巨人)、梅野隆太郎(阪神)とともに一軍に定着。プロの世界でも、最も壁が高いポジションだけに、多くの新人捕手が活躍した貴重なシーズンだったといえよう。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)