明らかになったヤフオクドームの改修 チームの特長を生かした球場はMLBにも多い
先日、ソフトバンクの本拠地ヤフオクドームの改修計画が明らかになった。
122メートルの中堅、100メートルの両翼の長さは変わらないが、外野フェンスを最大約6メートル前にせり出し、700席程度の観客席を新設。左中間、右中間のふくらみを短くする計画だ。さらに日本の球場で最も高いフェンスも、現在の約5.8メートルから2~3メートルほど低くするという。
今季、パ・リーグ最多の607得点をあげ、3年ぶりの日本一にも輝いたソフトバンクだが、チーム本塁打は95本でリーグ5位にとどまった。被本塁打も増えるだろうが、強力打線をより生かした球場にするのが狙いのひとつだろう。
自チームの特長をより生かすために球場を作るケースはMLBでもあることだ。
有名なところでは、1923年に完成した旧ヤンキースタジアムは、当時の主砲ベーブ・ルースが左打ちで、ルースの本塁打が出やすいように右翼までの距離が左翼よりも少し短く設計された。「ルースが建てた家」とも言われた球場の形は、2009年にオープンした新ヤンキースタジアムにも受け継がれている。
また、ヤンキースタジアムのように、左右非対称の球場がMLBには多くある。というよりも、ほとんどの球場が左右非対称で、両翼と左中間、右中間が同じ距離の球場は30球場のうちたった3つしかない。なかでも、サンフランシスコ・ジャイアンツの本拠地は、左翼が103.3メートル、右翼が94.2メートルと特に変わった形をしている。
一方、日本の球場で左右非対称なのは広島の本拠地マツダスタジアムだけで、それでも左翼が101メートル、右翼が100メートルと1メートルの差しかない。チーム数のちがいもあるとはいえ、球場のバリエーションという点では、MLBのほうが圧倒的に豊富である。
東京ドームも、もうすぐ開場30年 日本でも見てみたい変わった形の球場
とはいっても、以前はMLBも左右対称の球場がほとんどだった。
1960年代に建設された球場は、多くは野球専用ではなく、当時急速に人気が拡大していたアメリカンフットボールにも対応できる構造になっていて、左右対称の形が多かった。その結果、どの球場も同じような構造になってしまい、工場でクッキーを大量生産するために使われた型、いわゆる「クッキーカッターのようだ」と揶揄されるようになった。
そういった声をうけ、92年に完成したのがボルティモア・オリオールズの本拠地オリオール・パーク・アット・カムデンヤーズだ。左右非対称の構造や、レンガ造りのノスタルジックな雰囲気の球場は大きな話題を呼んだ。それ以降、新球場の建設ラッシュとなり、クッキーカッタータイプの球場は姿を消し、バラエティに富んだ球場が増えたのである。
左右非対称だけではなく、アリゾナ・ダイヤモンドバックスの本拠地は右中間にプールを設置するなど、MLBの球場はさまざまな趣向を凝らしている。
日本でも、前述したマツダスタジアムや楽天の本拠地コボスタなどはバーベキュースペースを設けるなど、新たな試みを始めた球場が増えてきた。しかし、構造のバリエーションという点ではまだまだ物足りない。
早いもので日本初のドーム球場、東京ドームができてから来年で27年になる。そう遠くない時期に、新球場という話も出てくるだろう。その時は、これまでとはちょっとちがった球場をぜひ作ってほしい。球界の盟主として引っ張ってきた巨人が作れば、よりインパクトを残せると思うが、どうだろうか。
文=京都純典(みやこ・すみのり)