コラム 2015.01.04. 17:00

「ガラスのプリンス」から「恐怖の2番打者」へ! ヤクルト打線の脅威・川端慎吾の球歴とは

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プロ9年目の昨季初の打率3割をマークし、更なる活躍が期待されるヤクルトの川端慎吾© KYODO NEWS IMAGES

父親の影響で左打ちになった野球一家の長男


 2014年シーズン、60勝81敗3分でリーグ最下位に終わったヤクルト。

 チーム防御率4.62は、唯一の4点台でダントツ最下位。しかし、開幕当初から打線は絶好調で、チーム打率.279は1位。個人成績を見れば、193安打と大ブレイクした山田哲人(.324=3位)を筆頭に、雄平(.316=6位)、畠山和洋(.310=8位)、川端慎吾(.305=10位)、バレンティン(.301=11位)と、3割打者が5人も出た。

 プロ9年目で初の3割(規定打席未到達年を除く)、打率ベスト10入りを果たした川端は、1987年生まれの27歳、大阪府貝塚市出身。軟式野球で国体出場経験のある父親の影響で野球を始めた。小学2年生から硬式の「貝塚リトル」に入団。左打ちにしたのも、ピッチャーとショートをやったのも、「父に憧れて、すべてマネしていました」と振り返る。なお、2歳下の妹・友紀(女子プロ野球・アストライア)も貝塚リトルに所属し、一緒に練習していたという。本物の「野球一家」である。

 貝塚市立第三中学校では、硬式クラブ「オール狭山ボーイズ(大阪)」に所属。ここでも、ピッチャーとショートを任された。週3回のチーム練習、土日は試合、毎日2時間の自主練習。3年生になって体が成長してくると、パワーとスピードがぐっと増し、野球関係者の注目を集める存在となった。

 中学卒業後は、市立和歌山商業高校へ。内野手に専念し、1年春からレギュラーの座をつかんだ。甲子園には2年夏、3年春の2回出場。184センチの大型遊撃手として、全国にその名を知らしめた。1番・ショートとして出場した3年春のセンバツでは、2回戦でエース・野上亮磨(現・西武)を擁する神村学園(鹿児島)と対戦。敗れたものの、2ランホームランを放ち、打撃力と勝負強さも見せつけた。

 3年夏は甲子園出場ならずも、ドラフト候補としての評価は揺るがなかった。当時の野球専門誌には「PL学園時代の福留孝介を思い出させる左打ちの大型遊撃手」といった絶賛コメントが並んでいる。

 高校生と、大学・社会人に分けての指名となった2005年ドラフト。高校生の目玉選手は、大阪桐蔭高校の投打の柱・辻内崇伸(元・巨人)と平田良介(現・中日)に、同じ大阪で頂点を争った履正社高校の4番・岡田貴弘(=T-岡田/現・オリックス)。川端は、東海大甲府高校の144キロ左腕・村中恭兵に次ぐ2番目にヤクルトから指名を受け、念願のプロ入りを果たしたのだった。


「ガラスのプリンス」から「恐怖の2番打者」へ!


 プロ1年目は2軍の試合で経験を重ね、10月に1軍昇格。プロ初安打を記録すると、ヤクルトの高校卒新人としては1968年以来の快挙と報じられた。

 2年目以降も2軍で経験を積み、1軍での出場試合を徐々に増やしていく。しかし、期待されながらも故障をくり返し、「ガラスのプリンス」と報じられることも。100試合以上の出場は6年目の2011年から。翌2012年は125試合に出場し、ようやくレギュラー定着かと思われた2013年、4月に左足首関節を手術。前半戦を棒に振ることになったが、長く悩まされていた足首痛を完治させた。復帰後の9月には自身初の月間MVPを獲得。ホームランを打ち続ける主砲・バレンティンの前、3番打者として結果を残していった。

 2014年、球団HPで公開した抱負は「全試合出場めざして頑張ります」。結果、142試合に出場し、4試合連続猛打賞、9試合連続打点など活躍し、自己最高となる打率.305、10本塁打を記録。「メッチャしんどかったです。100試合を過ぎたあたりから足がおかしくなってて……。長かったです」と明かしたが、「体のケアはいつも以上に気をつけて、休日は治療に行ってしっかり休む。過ごし方から変えました」という心がけが実を結んだ一年だった。

 12月に行われた契約更改では、2900万円増の8500万円(推定)でサイン。2015年の目標を「全試合出場と、何でもいいからタイトルを取りたいです。ゴールデングラブ賞も狙いたい」と笑顔で話した。ちなみに、2013年には「小さい頃からショートを守ってきて、強いこだわりがあります」と語っていたが、2014年はサードとして138試合に出場。チームワーストの14失策は、成長の余地としておきたい。

 2015年シーズン。真中満監督は早くも、1番・山田、2番・川端という打順構想を明かしている。「初回から送りバントは好きじゃない」とは、ヒットでランナーを進める、あるいは生還させる「恐怖の2番打者」になれということだ。

 真中監督は、打撃コーチとして指導を受けてきた恩人。その期待に応えるためにも、全試合出場は最低限。恐怖の2番打者として、堅守のサードとして、チームを勝利へと導く。そんな姿を1年間143試合、見せ続けてほしい。

文=平田美穂(ひらた・みほ)

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