先発ローテの軸4人で45勝がリーグ優勝の目安
今オフ、球界最大のニュースのひとつといえば、やはり黒田博樹の広島復帰である。その朗報を受け、「24年ぶりの広島優勝も現実味を帯びてきた」という記事も数多く見受けられる。ただ、先発ローテーションの一角として4年間で40勝を挙げたブライアン・バリントンの退団もあり、そう単純な話ではないという見方もできる。
一般的に勝率6割未満といわれる優勝ライン。引き分けの試合数を考えれば、80勝が目安である。
当然ではあるが、上位チームほど先発投手陣が安定して勝利を重ねている。リーグ3連覇中の巨人の先発投手勝利数を見ると、2012年から順に62、58、55という数字が残されている。
対して広島の先発投手勝利数は2012年から順に50、52、51。年々縮めている巨人とのゲーム差と比例して、先発投手勝利数でもその差を詰めているが、やはり一歩及ばない。ちなみに、2014年の救援防御率では、3.75の広島が、4.01の巨人や4.20の阪神を上回っている。その点からも、先発投手陣の奮起こそが、広島優勝の鍵と言って間違いないだろう。
巨人の数字から、優勝ライン80勝のうち60勝が先発陣の“ノルマ”だとしよう。開幕ローテの投手全員がシーズンを通して活躍することは現実的には難しい。しかし、ノルマ達成のためには、軸となるローテーション投手で45勝は欲しいところ。それぞれが二桁勝利を挙げるとしても、少なくとも4人の軸が必要となる。
黒田のほか、5年連続二桁勝利のエース・前田健太、2014年の新人王・大瀬良大地はまず間違いなくその軸として計算される。4人目の軸だが、新外国人はふたを開けてみなければ分からないこともあり、ここはやはり野村祐輔に期待するのが正しいだろう。
黒田博樹の復帰が悩める野村の飛躍をもたらすか?
2014年シーズンの開幕に当たり、「安定感ある投球でローテーションを守り200投球回達成」を目標に掲げた野村。しかし、二度の出場選手登録抹消を経験し、目標に遠く及ばない104.2投球回、7勝にとどまるなど、あらゆる数字でプロ入り後最低の成績を残す不本意なシーズンとなってしまった。
悩める次期エース候補は、2015年の飛躍を胸に秘め精力的なオフシーズンを送っている。秋季キャンプでは体を絞り3キロの減量に成功。フォームは新人王を獲得した一昨年までのワインドアップに戻した。また、2014年から投げ始めたシュートに続き、新球・フォークにも挑戦中だという。
野村はそもそも制球力こそが持ち味の投手だ。フォークをモノにできれば、投球の幅がさらに広がることは言うまでもない。今季から同僚となる黒田は、それこそ抜群の制球力でメジャーの並み居る強打者を打ち取ってきた。
黒田の武器のひとつは、野村が習得を目指すフォークと同様に縦に落とす変化球・スプリット。野村にとっては最高のお手本となる。黒田復帰は、ただの戦力以上の効果をもたらすことも期待できそうだ。
黒田、前田のダブルエースに、大瀬良、そして野村が4人目の軸として先発ローテを守ったときこそ、広島の優勝が実現にぐっと近づく。というより、チームにとって野村にはやってもらわねば困るのだ。
黒田は間もなく大台の40歳。前田はメジャー志向を公言している。そう遠くない将来、二人は広島を去るかもしれない。悲願の優勝はもちろん、その後のカープ投手陣を背負っていくためにも、野村には次期エースらしい奮起を期待したい。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)