投手陣で苦労する中で 育成枠出身初のシーズン30セーブ
3位に終わった2013年のシーズンオフに西武から涌井秀章を獲得し、昨季は優勝候補の一角にもあげられていたロッテだったが、一度も優勝争いに絡むことなく4位に終わった。それも、最下位の楽天とわずか3ゲーム差だったことを思うと、4位とは言え決して褒められた順位ではないだろう。
低迷した要因のひとつは、パ・リーグワーストのチーム防御率4.14を記録した投手陣にある。涌井は規定投球回に達したものの8勝12敗と負け越し、防御率4.21はリーグワースト2位。先発陣で結果を残したと言えるのは、チームで唯一2ケタ勝利を挙げ、新人王にも輝いた石川歩ぐらいだ。リリーフ陣の防御率も3.92でリーグワースト。2013年シーズンにパ・リーグ最多の33セーブをあげた益田直也が開幕直前にケガで離脱するなど、誤算も多かったシーズンだった。
やりくりに苦労したリリーフ陣の中で目立つ成績をあげたのは、49試合に登板し23ホールドを記録した大谷智久。そして、益田に代わってクローザーを務めた西野勇士だ。
08年の育成ドラフトで入団し、12年のオフに支配下登録された西野は、13年シーズンに先発として9勝を挙げた。クローザーに転向した昨季はリーグ3位の31セーブ。育成枠出身の選手では初のシーズン30セーブだった。
30セーブ以上の投手の中で成功率トップ 外国人選手に強さを見せる一方、気になる数字も……
タイトルの獲得こそならなかったが、クローザー西野の安定感は抜群だった。昨季、西野がセーブを失敗したのは5月4日西武戦、同14日ソフトバンク戦、9月9日西武戦のたった3試合だけ。セーブ成功率は91.2%で、昨季30セーブを記録した投手のなかで最も高かった。防御率は1.86と、サファテ(ソフトバンク・37セーブ)の1.05や呉昇桓(阪神・39セーブ)の1.76には及ばないが、勝って試合を終わらせるというクローザーの役割を果たしたのは西野だったのである。
また、被打率.169は30セーブ以上を記録した投手のなかでトップ。1イニングあたりに許した走者の数を表すWHIP(※1)も0.83で呉昇桓の0.81に次ぐ好成績だ。
もうひとつ、西野の特長としてあげられるのが外国人選手に対する強さである。昨季、外国人選手に対し通算で26打数3安打、被打率.115に抑え、本塁打は1本も打たれなかった。一昨年も外国人選手に本塁打を打たれておらずキラーぶりを発揮している。
圧倒的な成績を残した西野だが、気になる数字もある。ホームラン以外の打球がフェアゾーンに飛んだときヒットになる確率を表すBABIP(※2)が.226と良すぎるのだ。
一般的に、BABIPは.300前後に収まることが多く.300を大きく下回った場合は打球の運に助けられたとも考えられる。運という言い方も少々大げさだが、打ち取った打球が野手の間にポトリと落ちることや、ボテボテのゴロが野手の間を抜けることがある。逆に、痛烈な当たりでも野手の正面をついたために結果的にアウトになることもある。そういったことを数値化したのがBABIPなのだ。
例えば昨季、西野のBABIPがリーグ平均の.302だったとしたら、WHIPが1.07まで上がる計算になる。奪三振率が9.78と高い西野だが、ゴロを打たせることも比較的多いため(昨季、ゴロアウトが56、フライアウトが43)、BABIPに左右されるケースがほかの投手と比べて増える。
迎える今季、西野の成績がもしも落ちるようなことがあったら……BABIPの数値に注目するとその原因が見えてくるかもしれない。
(※1)WHIP(Walks plus Hits per Pitched)
(被安打数+与四球数)÷投球回数
1イニングに何人の走者を出したかを表す。昨季、セ・リーグ平均が1.35、パ・リーグ平均が1.32。
(※2)
BABIP(Batting Average Ball in Play)
(被安打数-被本塁打数)÷(投球回数×2.8+被安打数-被本塁打数-奪三振数)
ホームラン以外の打球がフェアゾーンに飛んだときヒットになる確率。防御率と同じように結果指数。野手の守備能力、運不運に左右されることもある。この数値をみるときは例年のものと比較するとよりわかりやすい。昨季、セ・リーグ平均.308。パ・リーグ平均.302。
文=京都純典(みやこ・すみのり)