ガラリと変わる日本ハムの内野の布陣
2013年シーズンの最下位から、昨季は3位に躍進した日本ハム。昨秋のドラフトで注目を集めた有原航平の獲得に成功し、戦力補強も着々と進んでいるように見えた。
ところが、FAで小谷野栄一がオリックスに、大引啓次がヤクルトにそれぞれ移籍。昨季、14本塁打を記録するも打率が.227と確実性に欠けることもあったミランダとは契約を更新しなかった。
昨季のスタメンを振り返ると、ミランダが一塁で68試合、小谷野が三塁で53試合、大引が遊撃で122試合にスタメン出場している。二塁で89試合にスタメン出場した中島卓也が遊撃に回るという話もある上に、アメリカに行っていた田中賢介の復帰が決まったものの、来季の日本ハムは内野の布陣が大きく変わることになる。一塁、二塁、遊撃で最多スタメン出場だった選手が違う選手に替わるのだ。長いプロ野球の歴史の中でも、たった1年で内野の布陣がここまで代わるのも珍しい。
そこで注目したいのが昨季、捕手登録ながら三塁でチーム最多の67試合にスタメン出場した近藤健介だ。プロ3年目を迎えた昨季、初の開幕1軍入りを果たした近藤に転機が訪れたのは5月上旬のことだった。
開幕からしばらくは、大野奨太や市川友也と交互に捕手として出場していた近藤だったが、レギュラー三塁手の小谷野がケガで離脱すると、5月2日のオリックス戦でいきなり5番三塁としてスタメンに抜擢された。同16日のロッテ戦でプロ初本塁打を放つと、29日のヤクルト戦では「人生初」という満塁本塁打を記録。20歳9カ月での満塁本塁打はチーム歴代最年少記録でもあった。
長打の割合36.8%は、陽や中田をも上回る...
小谷野が一軍に復帰したあとも、近藤が三塁スタメンとして起用されることが多く、昨季の終盤には遊撃手としても2試合出場した。シーズン通算で89試合に出場し打率.258、4本塁打、28打点。この成績だけを見れば、特筆すべきものはないかもしれない。しかし昨季、近藤が打った68安打のうち、二塁打がチームトップの20本、三塁打が1本、本塁打が4本と長打の合計は25本。安打の中で長打が占める割合は36.8%だ。
近藤は規定打席に達しなかったが、仮に達していればリーグ7位に相当する数値である。チーム内では大谷翔平の48.3%、ミランダの38.8%に次ぐ長打の割合で、中田翔(31.5%)や陽岱鋼(31.9%)をも上回る。それこそ、首位打者の糸井嘉男(34.3%=オリックス)よりも高い割合だ。
近藤はホームランこそ少ないが、外野の間を鋭く破り二塁打を量産するタイプ。そう見ると、昨季限りで引退した稲葉篤紀の後継者とも言える存在かもしれない。
課題は、左打者でありながら対右投手の打率が.239と低いこと。対左投手に打率.333と高打率を残していることから、右投手対策が重要となる。
前述の稲葉のほかにも、内野のリーダーとしてチームを引っ張ってきた金子誠が昨季限りで引退し、今季の日本ハムは一気に世代交代が進む。近藤が起用されるポジションは、まだはっきりとはしないが、バッティングではチームをけん引する可能性を秘めた選手であることは間違いない。
文=京都純典(みやこ・すみのり)