コラム

めっきり減ったプロ野球選手のCM出演 過去にあった懐かしのCMを振り返る

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『世界の王』はオロナミンCやナボナのCMでも存在感を発揮していた[Getty Images]

“俺たちの時代”80~90年代のプロ野球を語り尽くそう -80年代CM男編-

王貞治 ,

 シーズンオフたけなわのこの時期は、プロ野球選手を見る機会がめっきり減る。だが、そんなときでも、目に入ってくるのがTVで流れるCMだ。ただ、最近は選手のブランドが落ちてきたせいか、プロ野球選手が全国ネット規模で流れるCMに出演する機会は少なく、たまに登場するイチローやダルビッシュ有のCMなどは、選手のイメージ戦略を重要視するせいか、大変格好良い内容に仕上がっている。

 それの何が不満かって? いや、不満ということはないのだが、我らが80年代を振り返ると、プロ野球選手はまだ口ベタでぶっきらぼうだった時代である。当時の選手が出演していたCMというのは、一生懸命であればあるほど素人臭さが表に出てしまい、むしろ微笑ましく思えるものが多かった。だから、今の格好よさに違和感を感じてしまうのかもしれない。

 今回はそんな「名作CM」を輩出した当時の選手を振り返り、ランキングにして紹介しよう。


プロ野球選手の固いCMイメージを一新した掛布 ブーマーはユニークな内容で好感度と知名度がアップ


 まず、80年代のCM王といえば、やはり掛布雅之(元阪神)を1位に挙げたい。それまでは、王貞治(元巨人)の「ナボナはお菓子のホームラン王です」や、巨人の旬な選手が登場する「オロナミンCは小さな巨人です」のような正統派なCMが多かった中、「蚊には金鳥、マットです」、「野球より難しいなこりゃ」(東洋ゴム)、「これはプラグがひどい虫歯だー。オートバックス、いってるー?」などなど、ド素人ぶり全開の棒読みでかえって親しみを得る独自路線を切り開いた。

 続いて第2位はブーマー(元阪急他)、80年代パ・リーグにおいて落合博満(元ロッテ他)と毎年熾烈な三冠王争いを演じた巨漢選手で、湿布薬のパスタイムのCMが人気となった。その内容は、試合中に投球が体に当たって激怒してピッチャーに突進する実際の試合の映像が流れたあと、スタジオのセットとして作られた薬局に場面がかわり、駆け込んできたブーマーが顔を歪めながら、「パスタイム、クダサイ!」と店員に訴える、というもの。そこで、商品告知の音楽と音声が被さるが、店員が差し出したパスタイムを受け取ったブーマーが小声で「サンキュー」とささやいているのがミソとなっていて、大きな体格で怒ると怖いが、実は心優しき選手として長年親しまれたブーマーのキャラクターをさりげなく表す好感の持てるCMだった。


ぶっきらぼうな棒読み調の内容が多かった中 田尾の「青春系」CMは異色の存在だった


 そして、第3位には田尾安志(元中日他)を自信を持って推奨したい。実は、当時のプロ野球選手のCMには、掛布やブーマーほど三枚目に徹しきれず、とりあえずユニホーム姿で商品名やセリフを棒読みするCMが多かった。

 たとえば、ロッテの場合、村田兆治や有藤通世、落合博満が自社製品の使い捨てカイロ『ホカロン』で出演した時や、若松勉がヤクルトの野菜ジュースのCMで「野菜、パワーだ!」と言うものなどがそうだった。また、フケを抑える『ミカロン』というシャンプーのCMで、当時中日の先発エースだった小松辰雄とリリーフエースだった牛島和彦が共演したときには、「ボク先発。ミカロンで先発」、「ボク抑え。ミカロンでフケを抑えます」、「牛島!」、「小松さん!」、「抑えたいなぁ!」、「抑えたいっすね」と結構なセリフ回しをこなして面白かったが、やはりタレントというよりは素人さんという印象は否めなかった。

 ところが、田尾が花王のトニックシャンプーのCMに出演した際には、当時アイドルだった三田寛子が見守るグラウンドで私服姿の田尾が素振りをする、というかつてないシーンが登場。最後にはドラゴンズの帽子を三田寛子に被せてあげるという、まるでアイドルが出演するグリコのチョコレートのCMのような内容だったのだ。これは、今、動画サイトなどで見ると、「素人くささとしては、三枚目系のCMと大して変わらないじゃん?」と思うかもしれないが、リアルタイムで見ていた筆者にとっては「田尾は他の選手とは次元が違う。別格だ!」と大変な衝撃を受けたものである。

 あれから、もうかれこれ30年ほどの年月が流れたが、数少ないプロ野球選手主演の「青春系」CMの中でこれを凌駕するインパクトを受けた記憶がない。その意味で大変レアなケースと言えるだろう。

文=キビタキビオ(きびた・きびお)
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