08年の村田(当時DeNA)から生まれていない、セの日本人HR王
気が付けば、セ界で「和製大砲」という言葉が死語になりつつある。
セリーグでは09年から6年連続で助っ人選手が本塁打王を独占。2014年はエルドレッド(広島)が37本で初のタイトル獲得。その前はバレンティン(ヤクルト)が3年連続の一人勝ち。日本人選手のホームランキングは08年横浜時代の村田修一まで遡る。
なんと年間46本塁打、あの頃の村田さんは凄かった。今は好守の併殺王なのに。あ、すいません。対照的にパリーグでは08年以降に中村剛也(西武)が5度、10年にはT-岡田(オリックス)といったヘビー級の選手たちが本塁打王に輝いている。侍ジャパン不動の4番打者も中田翔(日ハム)だ。
いまや助っ人長距離砲が席巻するセリーグのリアル。昨季、20本塁打以上を放った日本人選手は山田哲人(ヤクルト)29本、雄平(ヤクルト)23本、筒香嘉智(DeNA)22本、村田修一(巨人)21本のわずか4名のみ。…正直、寂しいっす。いつの時代も豪快なホームランとビールの売り子のキュートな笑顔を見上げるために男たちは球場へ走る。求む和製大砲。いったい誰がバレンティンとエルドレッドに挑戦状を叩き付けるのか?
筆頭候補者としては、6年目を迎える筒香嘉智だろう。DeNA中畑監督は筒香を「新主将&4番」に指名し1年間戦うことを明言。昨年は7月終了時にリーグ3位タイ(日本人トップ)の17本を記録も、8月13日中日戦で味方選手と交錯し頭部を強打。1軍復帰まで3週間近く掛かりタイトルには届かなかった。あの松井秀喜も初めて本塁打王を獲得したのは高卒6年目の98年で34本。果たして筒香はハマのゴジラになれるのか?
もちろん山田哲人と雄平のヤクルトコンビも有力な候補だ。真中新監督は「1番山田、2番川端、3番バレンティン、4番雄平」の左右ジグザグ新オーダーを準備中。昨年リーグ日本人最多の29本塁打を放った山田、春季キャンプ中に計測のスイングスピードで154キロとチーム最速を記録した雄平。意外なことにヤクルトでは過去に本塁打王を獲得した日本人選手はひとりもいない。まだ国鉄スワローズだった57年の佐藤孝夫が最後である。歴代キングのパリッシュ、ハウエル、ホージー、ペタジーニ、そしてバレンティンと優良助っ人に恵まれたチームならではの悩みだ。
最後にこの男の名前も挙げておこう。阿部慎之助(巨人)。昨季は19本に終わったものの、2013年には32本塁打を記録。今季から1塁転向する36歳は、現時点でセリーグで30本塁打以上を放った最後の日本人選手である。
文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)