どうなる?背番号1
1年前の今頃、プロ野球界は松井フィーバーに沸いていた。
高2夏に出場した甲子園で1試合22奪三振のワンダーボーイ。13年ドラフトで5球団が競合した10年に1人の逸材。楽天ドラ1サウスポー松井裕樹は昨年のオープン戦で計4試合16回を投げ、防御率1.13の好成績。いくぞ新人王。あの67年江夏豊以来となる高卒左腕1年目の二桁勝利を期待されながら、ペナント開幕直後の4月にいきなり打ち込まれ2軍降格。悲しいけどコレ、プロ野球なのよね。それでも松井は6月初旬に1軍再昇格すると先発・中継ぎで奮闘し、1年目は4勝8敗、防御率3.80の成績で終えた。
期待以上でも期待外れでもない。例えるなら、友達以上恋人未満。大丈夫マイフレンド。その内容的には高卒1年目投手としては充分合格点だろう。登板27試合中17試合で先発登板。116回を投げ126奪三振を奪い、被本塁打はたったの2本。高卒新人(中退含む)で100奪三振以上は史上22人目。デビューから71回被本塁打0はドラフト制後の新人では最長記録である。その一方で与四球67と制球力には課題を残した。
過去に超高校級と称された「高卒ドラ1左腕」たちはプロの世界では苦労している。眠れるレフティモンスター辻内崇伸(巨人/06年)は1軍登板なしで眠ったまま引退。193センチの大型サウスポー松本竜也(巨人/12年)もプロ3年間でいまだ1軍登板はゼロだ。というわけで、90年代以降の主な高卒ドラ1左腕の2年目を数字でドン!
石井一久(ヤクルト/93年)19試 59.1回 3勝1敗 66三振 38四球 防御率4.70
高井雄平(ヤクルト/04年)9試 49.0回 4勝2敗 54三振 29四球 防御率4.41
吉川光夫(日本ハム/08年)7試 34.2回 2勝4敗 23三振 22四球 防御率6.23
菊池雄星(西武/11年)10試 54.1回 4勝1敗 24三振 8四球 防御率4.14
のちのメジャーリーガー石井は2年目にプロ初勝利。高井は1年目に松井裕樹と同じ27試合に登板し将来のエースを嘱望されながら、09年秋に野手転向。昨季外野手としてベストナインに選ばれ、いまや雄平はヤクルトの4番打者である。日本ハム吉川はルーキーイヤーの07年に19試合登板(内15試合先発)で4勝・防御率3.66と昨年の松井に近い成績を挙げるも、2年目は出番が激減。近年では西武の菊池雄星が2年目に涙の初勝利。それでもわずか10試合の登板数に終わった。
2015年シーズン、楽天のデーブ大久保新監督は松井の中継ぎ起用を示唆。7回クルーズ、8回松井、9回ミコライオの右左右ジグザク継投を計画中。どうなる?背番号1。2年目、19歳のサウスポーの起用法を巡ってファンの間でも意見が分かれている。
*石井、高井、吉川、菊池の()内の年度は2年目のもの
文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)