日本一を争ったソフトバンク・阪神がオープン戦上位に
オープン戦もそれぞれ10試合前後を消化し、順位表にも各チームの置かれている状況がはっきりと反映されてきた。まずは3月16日現在の順位表を見てみよう。
【2015年度オープン戦順位表】(3月16日現在)
2位:阪神 11試 7勝 3敗 1分 0.0差
4位:DeNA 10試 5勝 3敗 2分 1.0差
5位:オリックス 11試 5勝 5敗 1分 1.0差
6位:巨人 14試 6勝 7敗 1分 0.5差
7位:ヤクルト 12試 5勝 6敗 1分 0.0差
7位:中日 11試 5勝 6敗 0分 0.0差
9位:楽天 11試 4勝 6敗 1分 0.5差
10位:西武 6試 2勝 3敗 1分 -0.5差
11位:広島 7試 2勝 5敗 0分 1.0差
12位:日本ハム 10試 1勝 7敗 2分 1.5差
昨季の日本一チーム・ソフトバンクは貫禄の首位。先発はもとより強力な中継ぎ陣を抱える強みを発揮している。そのソフトバンクと日本一を争った阪神は2位。5年目の岩本輝、ルーキー・石崎剛ら若手投手が好調でチーム防御率は12球団トップだ。ロッテは15日の巨人戦まで3試合連続2桁安打と打撃好調。チーム打率は3割に迫る。
一方、リーグ4連覇、そして3年ぶりの日本一奪還を目指す巨人は6位。左前腕部炎症のため内海哲也の開幕ローテ入りが絶望視される他、今季の4番と目されていた大田泰示は左大腿二頭筋肉離れで戦線離脱。主力の故障や不調が目立ち、開幕前から不穏な空気がたち込めている。
投打ともに元気がないのが広島と日本ハム。黒田博樹が復帰し「今季こそ優勝を」と意気込む広島は11位で、チーム防御率5.25はダントツの最下位だ。2勝はいずれも黒田の先発試合であり、黒田以外の投手陣の仕上がりに不安が残っている。日本ハムは10試合目に至ってようやく初勝利を挙げるという絶不調ぶりだ。
オープン戦最下位からの優勝は超レアケース
もちろん、これはあくまでオープン戦の結果である。オープン戦の目的は、期待する若手のテストや主力の調整であり、勝利ではないという認識が一般的だ。そのため、「オープン戦の結果は当てにならない」、さらには「オープン戦で好成績を挙げたチームや選手はシーズンで低迷する」というジンクスさえささやかれる。果たして、本当にそうなのだろうか。そこで、過去10シーズンのオープン戦成績とレギュラーシーズンの成績の関係性を振り返ってみたところ、なかなか興味深いデータが見えてきた。
12球団でのオープン戦順位をセ・パ両リーグに分け、それぞれ上位3球団を「オープン戦Aクラス」、下位3球団を「オープン戦Bクラス」とすると、オープン戦AクラスのチームがシーズンでもAクラスに入ったケースは65%。3チームのうち2チームはシーズンでもAクラス入りを果たしている計算だ。
さらにサンプルを絞り、オープン戦でリーグ1位だったチームがシーズンでもそのまま首位に立ったケースは35%、過去5年に限れば40%となる。6チームで争う本来の優勝確率を約17%(6球団、平等にチャンスがあるとした場合)だということを考えれば、オープン戦でリーグ1位に立った時点で大きく優勝に近づくことになる。
逆にいえば、オープン戦Bクラスだったチームは、シーズンでの苦戦は避けられない。もちろん、オープン戦で振るわなくとも、前評判を覆した例はいくらでもある。ただし、オープン戦で12球団最下位だったチームに限っては悲惨だ。オープン戦最下位からシーズンでAクラス入りした例は、10年間でわずか1チームのみ。リーグ優勝はおろか、CS進出も絶望的といえる。
ただ、このレアケースの1チームこそ、いわゆる「メークレジェンド」を成し遂げた2008年の巨人だ。この年、巨人はオープン戦の不調そのままに球団ワーストの開幕5連敗を記録し、早々に単独最下位に。すると、原辰徳監督は調子のいい若手を積極起用する方針に転換した。けがの功名ともいえる戦略が奏功し、山口鉄也、越智大祐、亀井義行、そしてまだ19歳だった坂本勇人ら、前年まで出場機会がほとんどなかった若手たちが一挙にブレーク。阪神との最大13ゲーム差をひっくり返し、奇跡の大逆転優勝となった。
「オープン戦の結果は当てにならない」というジンクスを完全に否定するには至らなないものの、少なくともオープン戦最下位からの躍進はかなりハードルが高いといえる。前例を打ち破るには、2008年の巨人のように、複数の若手がそろっていきなり台頭するなど、奇跡的な要因が必要であることは間違いない。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)