全盛期を知るファンには痛ましい野手の成績
野茂英雄がMLBを席巻してから早20年。多くの日本人選手がメジャーに挑戦し、逆にアメリカから日本球界に復帰することも珍しくなくなった。今季は、黒田博樹(広島)、松坂大輔(ソフトバンク)、中島裕之(オリックス)、田中賢介(日本ハム)の4人が帰国組だ。
そもそもメジャーに挑戦するような選手は日本では一線級の選手がほとんど。もともとの実力に加え、荒波にもまれた経験を武器に活躍が期待される一方で、故障や年齢による衰え、ブランクを不安視する声も多い。
では、過去にメジャーから日本球界へ戻ってきた選手たちはどうだったのか。主な選手の復帰1年目の成績を振り返ってみたい。まずは野手から。
●新庄剛志(日本ハム)
メッツ他に3年在籍
2004年:123試 率.298 本24 点79
●井口資仁(ロッテ)
ホワイトソックス他に4年在籍
2009年:123試 率.281 本19 点65
●田口壮(オリックス)
カージナルス他に8年在籍
2010年:53試 率.261 本3 点10
●城島健司(阪神)
マリナーズに4年在籍
2010年:144試 率.303 本28 点91
●松井稼頭央(楽天)
メッツ他に7年在籍
2011年:139試 率.260 本9 点48
●岩村明憲(楽天)
レイズ他に4年在籍
2011年:77試 率.183 本0 点9
●福留孝介(阪神)
カブス他に5年在籍
2013年:63試 率.198 本6 点31
●西岡剛(阪神)
ツインズに2年在籍
2013年:122試 率.290 本4 点44
数字を振り返ると、復帰シーズンに全試合出場を果たし打率.303、28本塁打を記録した城島が光る。しかし、メジャー挑戦直前には3年連続で打率3割をマークした岩村、中日時代に2度の首位打者を獲得した福留はともに打率1割台と低迷。全盛期を知るファンにとっては、痛ましく映るほどだ。全般的に、かつての球界を代表した選手の成績としては物足りない数字が目立つ。
復帰1、2年目の成績が選手生命に直結する
日本人の場合、野手よりも通用しやすいといわれ、より多くの選手がメジャーを目指している投手の場合はどうだろうか。人数が多いため、ここでは、3年以上MLBに在籍した場合に限ってNPB復帰1年目の成績を掲載する。
●伊良部秀輝(阪神)
ヤンキース他に6年在籍
2003年:27試 13勝8敗 防3.85
●吉井理人(オリックス)
メッツ他に5年在籍
2003年:24試 2勝7敗1S 防6.51
●佐々木主浩(横浜)
マリナーズに4年在籍
2004年:25試 1勝2敗19S 防3.18
●木田優夫(ヤクルト)
ドジャース他に3年在籍
2006年:56試 3勝5敗8S 防3.09
(※1999〜2000年にもMLBに在籍しているが二度目のNPB復帰時の成績)
●石井一久(ヤクルト)
ドジャース他に4年在籍
2008年:28試 11勝7敗 防3.44
●岡島秀樹(ソフトバンク)
レッドソックスに5年在籍
2012年:56試 0勝2敗9セーブ 防御率.0.94
(※2013年にもMLBに在籍しているが一度目のNPB復帰時の成績)
●五十嵐亮太(ソフトバンク)
メッツ他に3年在籍
2013年:51試 3勝3敗12S 防2.53
●斎藤隆(楽天)
ドジャース他に7年在籍
2013年:30試 3勝0敗4S 防2.36
●高橋尚成(DeNA)
メッツ他に4年在籍
2014年:10試 0勝6敗 防5.29
伊良部は防御率こそ4点前後と安定を欠いたが、5つの貯金をもたらしリーグ優勝に貢献。佐々木は19セーブとまずまずの成績を収め、石井も先発として十分に及第点に達している。防御率3点以下の岡島、五十嵐、斎藤の3人は復帰して日が浅いこともあるが、今も現役で活躍中だ。
投手の場合、野手よりも復帰シーズンの成績が悪くないようにも思える。ただ、ここではメジャー在籍3年以上の投手を挙げたために触れていないが、高橋健(広島)、藪恵壹(楽天)、建山義紀(阪神)は復帰1年目に期待された数字を残せず、そのまま引退。また、伊良部、佐々木の他、高津臣吾(ヤクルト)、福盛和男(楽天)、小林雅英(オリックス)は2年目に急激に成績を落とし引退、あるいは戦力外通告を受けることとなった。育成中の若手ではなく、まず結果が問われる立場だけに、復帰1、2年目の成績がそのまま選手生命に直結しているようだ。
全般的に華々しい復帰シーズンを飾る選手が少ない帰国組。果たして今季の3人はその“ジンクス”をはねのけることができるだろうか。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)