コラム

優勝候補のオリックスのホームを守る男・伊藤光の球歴とは

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正捕手として19年ぶりのリーグ優勝を目指すオリックスの伊藤光©BASEBALLKING
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優勝候補・オリックスのレギュラーキャッチャー


 いよいよ、開幕まで1週間。各チームの戦力がほぼ出そろい、解説者やファンによる順位予想が大いに盛り上がっている。パ・リーグの優勝候補として多くあがっているのが、昨年優勝のソフトバンクと、同じく2位のオリックス。開設者の江川卓氏はオリックスを1位と予想し、テレビの生放送で「ダントツです!」と言い切った。

 昨年は優勝マジックを点灯させながら、最終盤で失速。10月2日、ソフトバンクとの直接対決でサヨナラ負けを食らい、18年ぶりの悲願だったリーグ優勝を目前でさらわれた。ソフトバンク・松田宣浩の打球が左中間に抜けると、キャッチャーの伊藤光はホームで号泣。一人で歩くこともできず、抱えられてベンチに戻ると、タオルに顔を埋めて泣き続けた。

 伊藤は1989年4月生まれ、愛知県岡崎市出身。2007年の高校生ドラフト3巡目(実際は2番目の指名)で入団し、今年で8年目を迎える。5歳で野球を始め、小学生の頃は岡崎リトルリーグ、岡崎市立東海中学校時代は東名古屋スターズ(現・東名古屋ボーイズ/ボーイズリーグ)に所属。愛知県選抜のメンバーに選ばれるなど、注目を集めていた。出身チームには愛着があるようで、東名古屋ボーイズのホームページによれば、年末には必ずグラウンドを訪れるという。なお、同じキャッチャーの赤田龍一郎(中日)は、2学年上の先輩にあたる。

 中学卒業後は、全国から逸材が集まる名門・明徳義塾高校(高知)へ。高校球界の名将・馬淵史郎監督に「(入部直後に見て)3年やればドラフト候補になると思った」と言わしめた。英才教育の一環として、ショートやピッチャーも経験。ショートでは抜群のグラブさばきを披露して、周囲を驚かせた。身長180センチ、遠投120メートル、ホームから二塁への送球1.8秒、そして、50メートル走6秒1。高校3年時のインタビューでは、「盗塁できるキャッチャーはなかなかいないと思うので、走れるキャッチャーという部分をアピールしたいです」と話している。

 2年秋以降、強肩強打(+俊足)の捕手として広く知られるようになったが、甲子園には縁がなかった。2年夏、3年夏と県大会準優勝。昨年10月、優勝を逃したソフトバンク戦では、高校時代に2年連続で味わった悔しい思いが重なり、「また、あと一歩のところで……」と涙が止まらなかったという。

 それでも、伊藤の評価は揺るがず。当時の野球専門誌は、「ドラフト候補の高校生捕手として最初に名前があがる存在」「強肩と軽快なスローイングはプロの資質」など絶賛。熱烈なプロ志望ということもあり、オリックスの3巡目指名を受け入れた。

伊藤光,

選手生命が危ぶまれた故障との戦いを経て、「今度こそ」――


 プロ1年目となる2008年は、2軍で43試合。1軍での1試合出場は、球団の期待の表れだった。しかし、2年目の2009年、椎間板ヘルニアを発症して手術。「野球をやるどころか、歩くこともできなかった」という状態から復活をめざした。

 2011年、奇跡の復活を遂げて開幕スタメン、66試合出場。オフには、脊髄損傷や病気などに苦しむ人々のため、日本せきずい基金への寄付活動をスタートすることを発表した。2012年シーズンから、出場試合数などに応じた寄付活動を続け、自らの励みにしているという。

 2013年には、137試合に出場して規定打席到達する。名実共に、レギュラーを獲得した。レギュラー定着2年目の昨季は、同じく137試合に出場。チーム防御率2.89は、12球団唯一の2点台。「ぼく一人での数字じゃない」と本人は謙遜するが、投手陣をしっかり支えたことが数字で証明されたといえる。課題といわれてきたバッティングは、規定打席に届かなかったものの、打率.257、打点48。打率は2013年を下回ったが、打点はアップ。試合を決める一打など、勝負強さを見せた。ちなみに、高校時代にアピールした盗塁は0(通算7)である。

 オールスターファン投票1位、ゴールデングラブ賞、ベストナイン、金子千尋との最優秀バッテリー賞。日米野球では日本代表のスタメン捕手として、2試合に出場して2勝。キャッチャーとして最高の評価を受けた昨季だったが、野球選手として一番手にしたかった優勝は、手からすり抜けていった。

 2012年に優勝した日本ハムは、翌年最下位。2013年に日本一になった楽天は、翌年最下位。戦国時代が続くパ・リーグで、2位から優勝へとのし上がるのは容易ではない。だからこそ、チームは大型補強をしたわけだが、長いペナントレースに正捕手の存在は欠かせない。キャッチャー・伊藤を含めた「投手陣」であり、その点でオリックス有利という予想は納得できるところだ。

 「今年こそは」という思いに、高校時代から続く「今度こそは」という思い。新選手会長となった伊藤光の思いはかなうのか――。もうすぐ、長い戦いが始まる。

文=平田美穂(ひらた・みほ)
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