先発陣は大瀬良と森下を軸に陣容が整う
昨季の広島は、チーム防御率4.06(リーグ5位)の投手不振が、9年ぶりの5位低迷に直結した。投手陣の立て直しはチーム再建への絶対条件。その先頭に立とうする先発「2本柱」が、万全な仕上がりでナインを鼓舞している。まずは、大瀬良大地が大黒柱を担う。3年連続の開幕投手に内定。昨季5勝に終わった姿は見る影もないほどに順調だ。
「引っ張っていく立場にあるので、しっかりと責任と自覚を持って、毎日を過ごしていきたい」
昨季は右肘の不調で、直球が140キロ台前後にまで低下。2度の降格を経験して、昨年9月に右肘手術を決断するに至った。患部は極めて順調に回復した。春季キャンプは2軍スタートながら、2月中旬に1軍合流。手術後初の対外試合となった2月28日、日本ハムとの練習試合では最速147キロを計測して3回無失点に抑える好投を見せた。1試合のみで万全を確信した佐々岡監督からは、試合後に開幕投手を告げられた。
「2年連続で開幕投手をやらせていただいて、非常に特別なマウンドであることは肌で感じている。すごく意味のあるマウンドだと思う。しっかりと良い調整をして、最高のパフォーマンスをみなさんにお見せできるように頑張っていきたい」
今季から投手キャプテンを務める。「例年以上にいろんなところを見渡してやっていこうとキャンプに入った。コミュニケーションもたくさん取れて、いいキャンプを送れたと思う。今後につなげていきたい」。2軍日南キャンプでは、若手と積極的にコミュニケーションを図り、1軍では投球内容を通してあるべき姿勢を示してきた。その主将を支えようとするのが、先発陣「第2の柱」を担う森下暢仁である。大卒1年目の昨季は、チーム最多の10勝を挙げて新人王を受賞し、大瀬良、K・ジョンソンが離脱した先発陣をけん引した。
昨季の成績に満足しない向上心は、新球の挑戦に表れている。1月には、球団OB前田健太(ミネソタ・ツインズ)からツーシームなどの教えを請うた。今春の実戦では、1試合に2、3球程度試しながら精度を高めている。
「今季のためだけではなくて、野球をやる上で必要になってくる時がきたら(使いたい)。使える球が増えれば、投球の幅も広がってくると思う」
さらには、昨季自身初の規定投球回に到達して8勝を挙げた九里亜蓮が控えている。野村祐輔が昨年10月に受けた「右鎖骨下静脈血栓除去手術」の影響でキャンプ2軍スタートとなったものの、中村祐太、床田寛樹、遠藤淳志、高橋昂也ら先発の枚数がそろっているのは好材料と言える。
ブルペン陣の整備が最大の課題
そうとなれば、投手陣最大のテーマであるブルペン陣の整備に集中できる。昨季救援陣の防御率4.64はリーグワースト。さらに、昨季19セーブを挙げたフランスアが3月上旬に右膝手術を受けて長期離脱。先発陣と比べれば、解消すべき課題は山積みだ。
そんな窮地を救おうとするのが、即戦力の新人3人である。まずは、ドラフト1位・栗林良吏(トヨタ自動車)が社会人ナンバー1の前評判通りの投球内容を見せている。オープン戦から球速は150キロを超えて、勝負球のフォークはプロの打者相手にも通用。「先発、リリーフにこだわりがないので、1軍で活躍できる場所があるなら、それをつかみ取りたい」。先発ローテーションを担える実力を持ち合わせながら救援起用となったのは、勝ち継投を担えると判断された期待の高さゆえだろう。
大卒新人の2人は、「柔と剛」正反対のスタイルでアピールする。同2位・森浦大輔(天理大)は、140キロ台前半の動く直球を駆使。技巧派として実戦登板を重ねながら評価を上げている。一方の同3位・大道温貴(八戸学院大)は、直球中心に強気に押し込むのが持ち味。キャンプ中から抑え候補として名前を挙げられるまでに評価を高めた。
佐々岡真司監督は「新人の3人の活躍がみんなの刺激になっている。課題だった中継ぎの中に入ってもらいたい」と開幕から戦力として計算する。加えて、昨季に勝ち継投として経験を積んだ塹江敦哉、ケムナ誠も順調な調整で備えている。昨季は開幕時に先発の軸として期待された大瀬良、K・ジョンソン、抑えに抜てきされたスコットが、いずれも不本意な成績のまま離脱した。不測の事態への対処法は、昨季の経験も生かされるだろう。好不調の見極めなど、適切な起用方法もチームの行方を左右する。
文=河合洋介(スポーツニッポン・カープ担当)