来日5年で打率2割台はたったの一度だけ
球団創設80周年というメモリアルイヤーを10年ぶりの優勝で飾りたい阪神にとって、中日との開幕戦はサヨナラ勝ちと最高のスタート切った。阪神の開幕戦サヨナラ勝利は、1リーグ時代の1941年阪急戦以来、実に74年ぶり。2リーグ制後では球団史上初の劇的な決着だった。
サヨナラ打を放ち、主役となったのが来日6年目のマートンだ。
昨季、打率.338で自身初の首位打者に輝いたマートンの長所は、コンスタントに結果を残せることにある。来日5シーズンで打率2割台に終わったのが2012年の1シーズンだけ。他の4シーズンは打率3割以上を残している。常に3割を残す打者がいることは、打順を組む上で相当心強いことだろう。
状況別の成績を見ても、マートンは特に苦手としているものがない。
昨季の対戦球団別で最低打率は巨人に対する打率.289で、ほかの4球団には打率3割以上を残している。主な球場別成績でも東京ドームで打率.261だった以外は、打率3割以上を記録するという安定ぶりだ。
投手の左右別成績では右投手に対し打率.310、左投手に対しては規定打席に達した両リーグの選手の中でトップの打率.426を残した。また、デーゲームで打率.347、ナイトゲームでも.336と苦手なところを探すほうが難しい。
打球の方向も、レフトに37%、センターに32%、ライトに31%と極端な傾向は見られない。バッテリーを含め、守っている側としてはこれ以上攻略が難しい打者はいないだろう。
スランプもない抜群の安定度!
苦手な部分が見当たらないマートンは、長いスランプに陥ることもない。昨季、無安打の試合がもっとも長く続いたのはなんと3試合。2012年シーズンを見ても最長は2試合というから恐れ入る。
マートンの前を打つゴメスは昨季26本塁打109打点と一発長打が魅力だが、三振も166個と確実性ではマートンには圧倒的に劣る。だが、ゴメスのあとに確実性のあるマートンが控えることで、本塁打を警戒する場面でも相手バッテリーはゴメスと安易に勝負を避けることはできない。そう考えれば、このふたりは阪神球団史上最高の外国人コンビと言えるかもしれない。
昨季はレギュラーシーズンこそ2位に終わったが、クライマックスシリーズを勝ち抜き、9年ぶりに日本シリーズに進出した阪神。惜しくもソフトバンクの前に敗れたが、今年こそリーグ優勝、そして30年ぶりの日本一へとファンの期待も大きい。
メッセンジャー、能見篤史、藤浪晋太郎と中心とした投手陣はリーグ屈指なだけに、打線がどれだけ機能するか。「ミスター・コンスタント」とも言えるマートンにどれだけチャンスを回せるかが、大きなカギを握ることになる。
文=京都純典(みやこ・すみのり)